[Book Review 今週のラインナップ]
・『レジリエントな社会 危機から立ち直る力』
・『スマート・イナフ・シティ テクノロジーは都市の未来を取り戻すために』
・『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える“テレ東流”逆転発想の秘密』
・『雨、太陽、風 天候にたいする感性の歴史』
[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]
・『国鉄』
・『ミャンマー現代史』
・『大都市はどうやってできるのか』
・『マルクス・アウレリウス 「自省録」を読む』
評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
コロナ対応は国により千差万別だ。米国は、国内全土のロックダウンで一時年率3割超の経済収縮に遭遇したが、早期のワクチン開発に成功、昨春にはコロナ前の経済水準に復帰し、すでにポストコロナ社会にある。中国は、震源地・武漢での苛烈なロックダウンで初期のコロナ制圧には成功したが、その後、変異株が流行する中でも続けられたゼロコロナ政策が、経済に影を落としている。
本書は、世界的に著名な経済学者が、パンデミックのような予測不可能な危機に対応できる望ましい社会の姿を探った。欧米中心の論考だが、日本も学ぶところが多い。
予測不能の危機にどう対応するか 日本に欠けた柔軟な「復元力」
かつては頑健な社会が理想とされた。例えば樫(かし)の木のように風が吹いても動じない、ショックへの耐性が強い社会だ。だが樫は、一度折れると元には戻らない。一方、葦(あし)は嵐に翻弄されても収まれば元の姿に戻る。本書が目指すレジリエンスは後者のような「復元力」、個人や社会がショックから立ち直るための力だ。
興味深いのは、効率を最優先してきた主流派経済学が、「冗長性(余裕やあそび)」の保持を望ましいと論じ始めた点だ。また、市場は大きなショックには対応できずむしろ事態を悪化させるケースもあり、その吸収には「社会規範」が有用とも主張する。
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