[Book Review 今週のラインナップ]
・『因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか』
・『私が陥った中国バブルの罠 レッド・ルーレット 中国の富・権力・腐敗・報復の内幕』
・『戦争の教訓 為政者は間違え、代償は庶民が払う』
・『高校生のための「歴史総合」入門【世界の中の日本・近代史】Ⅰ 日本に「近代」到来』
評者・米イェール大学助教授 成田悠輔
「それって因果関係あるんですか?」。そんな疑問がここ数年かつてなくメディアや食卓の話題に上った。マスクで本当に感染を減らせるのか、ワクチンはどうか、水際対策やロックダウンはどうか──。すべては「何かがほかの何かに影響を与えているのかいないのか」という因果関係にたどり着く。
科学書であると同時に歴史書 因果関係プロレスの巨人が語る
因果関係とは何だろうか。バシッとした言葉による定義を与えたのは18世紀半ばの哲学者ヒュームだといわれる。ヒュームの言葉が20世紀前半には「根拠のある論理を伴った数学的対象へと変貌を遂げ」、コンピュータープログラムに書き下してデータで測れるようになった。今日では、因果関係を理解し意思決定を行う人工知能も存在する。
要約すれば数行の歴史だが、そこには数世紀にわたる混乱と思考の軌跡があった。因果関係を定義し測定する手法の探求は哲学・数学・統計学・計算機科学といった分野をまたぎ、その応用は医学・公衆衛生・政治・経済などに及ぶ。それだけに論争や主導権争いも絶えず、その様はまことに人間臭く、プロレスを見ているような楽しさもある。
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