東大教授が解説「量子力学」が拓く人類の可能性 今年のノーベル物理学賞の受賞テーマに熱視線

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では、物を分解したら何が残るのか? アリストテレスは火と水と土と空気と考えましたが、実は分子でできていることがわかりました。英語ではMolecule。たとえば水の正体は「水分子」だったんです。

1滴の水に水分子が兆の上の京(けい)のさらに上の垓(がい)という聞いたことないレベルの数が入っています。人間の体は37兆個の細胞でできていると言われていますけど、その細胞1個1個も無数の分子でできています。

さらにその分子を細かく調べると、あらゆる分子はひとつ以上の原子で構成されていることが判明します。たとえば水分子は「水素原子」2個と「酸素原子」1個。そこで水分子は「H2O」と書きますよね。Hは水素原子、Oは酸素原子を表しています。

ちょっと言葉が紛らわしいのですが、種類を強調するときは「元素」とも言います。繰り返すと、世の中に存在するものは必ず分子でできていて、分子自体は元素(原子)のどれかでできています。たとえばH2Oは水分子ですが、O2は酸素分子、H2は水素分子と言います。

元素は、現在は118種類知られています。でも昔、私が元素記号を必死に覚えていた頃って、112種類なんですよ。つまり、少しずつ増えている。
自然界に存在する元素は90種類くらいだと言われていて、それらはすべて判明しています。残りは科学者が人工的につくったものです。元素と元素をぶつけて、この世に存在しない新しい元素をつくってしまいました。

日本生まれの元素

たとえば2016年に113番目の元素として追加された原子は日本生まれで、その名も「ニホニウム」と言います。それを発見した森田先生と、ニホニウムが正式に認められる前にお会いしたことがあります。元素番号30番の亜鉛をビーム状にして、元素番号83番のビスマスという原子にぶつけてつくったそうなのですが、「名前どうするの、教えて」としつこく聞いたけど、かたくなに「教えない」と言われました(笑)。

これらは、新しい原子をつくること自体が目的です。そもそも人工的につくられた元素は形が不安定なので、すぐにほかの元素に形を変えてしまうんですよ。でも一応、1000分の2秒くらいその状態を維持できれば、新しい元素として認められます。

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