個人の「遺伝子情報」がわかる時代に起きること 遺伝的な疾病の要因がわかるが、差別要因にも

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ゲノム編集技術はあらゆる生命・分野に応用ができ、最先端のバイオテクノロジーは、大量に多種多様な遺伝子データを取り扱うため、研究スタイルは大規模化かつオープンサイエンス化に進んでいます。

さらに研究組織は、拠点化、ネットワーク化が進み、分散型から相互連携ネットワーク型に移行しており、さまざまな分野の研究との連携を促進するため、大型拠点化が進められています。

欧米諸国では、1つ屋根の下に大学や企業の関係者が集まり、一体となって研究開発に取り組むイノベーション拠点である「アンダーワンルーフ型」の研究施設が構築されています。大型拠点のアメリカのブロード研究所や、イギリスのフランシス・クリック研究所ではデータや異分野人材の交流により、新たな領域の多種多様な研究が開始されています。

「研究機関」の枠を超えたバイオファウンドリ

一方、日本は、依然として従来の個別ラボでの分散型の研究スタイルを踏襲しているため、他分野との連携や社会全体のデジタル化、オープンサイエンス化が必須のバイオテクノロジー分野において、なかなかイノベーションが生まれにくい環境となっています。

海外では大型拠点化にとどまらず、ゲノム編集技術などを含めた合成生物学分野において、大学や研究機関が組織内で基礎から実用化研究までの一連の研究開発を担う体制や設備を整える、研究機関の枠を超えた「バイオファウンドリ」が各地で構築されています。

バイオファウンドリとは、「バイオ由来製品の生産性向上やコスト低減化を図ることを目的とした培養・運搬・受託製造などのバイオ生産システム」とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では定義されています。また、Global Biofoundry Allianceなど、世界的なアライアンス立ち上げの動きも起こっており、グローバル連携が進んでいます。

バイオエコノミーの時代―BioTechが新しい経済社会を生み出す
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日本では、が2020~2026年度で「バイオものづくりプロジェクト」を推進しており、国内において世界と競争できるバイオファウンドリの構築を目指しています。

バイオテクノロジーは、もはや大学や研究所だけで実験するものではなくなり、家庭でも気軽にできるようになっています。1990年代、インターネットでさまざまなITベンチャー企業が立ち上がり、技術革新が進みました。バイオテクノロジーも一般市民が参加することで新しい潮流ができようとしています。技術がオープン化され、異なる知識や経験を持つ人が議論しながら研究可能となることで、新たなイノベーションの創出が期待されています。

齊藤 三希子 スマートアグリ・リレーションズ 社長執行役員

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さいとう みきこ / Mikiko Saitou

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了、大学院で環境経済学を学ぶ。外資系総合コンサルティングファームのディレクター職を経て現職。地域資源を活用した持続可能な地域モデルの創出や、Agri-Food Tech、カーボンニュートラル、バイオエコノミー、食料安全保障などの事業創出に多数従事。主な著書に、『カーボンニュートラル2050アウトルック』『カーボンZERO気候変動経営』『〈培養肉、植物肉、昆虫食、藻類など〉代替タンパク質の現状と社会実装へ向けた取り組み』(共著)など。

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