成長か停滞か、「世界の鉄道ビジネス」が向かう先 「イノトランス」で見えた環境、高速化、米中関係
広い野外会場にずらりと並ぶ鉄道車両に多くの人が群がっている。注目の的はドイツのシーメンスやフランスのアルストムといった大手車両メーカーが開発した最新の車両だ。世界大手の一角に上り詰めた日立製作所の新型車両も展示されている。
ドイツのベルリンで2年に1度開催される国際鉄道見本市「イノトランス」は、世界各国の鉄道関係者が集結する世界最大の鉄道イベントだ。会場内はメーカーの営業マンが新製品を売り込むだけでなく、参加者同士が近況を知らせ合う情報交換の場としても貴重な存在だ。会場となるメッセベルリンのマルテン・エクニッヒCEOは「会場をぐるりと回れば鉄道業界の進む方向が見える」と胸を張る。
コロナ禍で4年ぶりの開催
2020年のイノトランスは新型コロナウイルスの世界的な流行による影響で中止となり、今回は4年ぶりの開催。「2年に1度の開催でもITの進化ぶりに驚かされるのに、今回は4年ぶり。どんな進展を目にすることになるのか楽しみだ」と、日本鉄道システム輸出組合の村﨑勉専務理事が話す。
「会場で実際に製品を目で見て手に触れることができる。この体験に勝るものはない」。9月20日の開会式でエクニッヒCEOが各国の鉄道会社や鉄道メーカーのトップを前にこのように述べたが、続いてあいさつに立った欧州委員会のアディナ=イオアナ・バレアン運輸担当委員の発言で会場の空気が一変した。「私の仕事場であるベルギーのブリュッセルからベルリンまでの距離は750kmだが、列車での所要時間は7時間。時間がかかりすぎだ」。
EU(欧州連合)は2050年までの温室効果ガス実質排出ゼロ達成を目標として掲げる。交通は温室効果ガス排出量の多い分野の1つとはいえ、自動車や航空機に比べると鉄道は1人当たり排出量が圧倒的に少ない。そのため、EUは自動車や航空機から鉄道へのシフトを促すべく高速鉄道網の整備や鉄道貨物輸送の強化策を次々と打ち出している。
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