成長か停滞か、「世界の鉄道ビジネス」が向かう先 「イノトランス」で見えた環境、高速化、米中関係

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気候変動対策と並ぶ会場内の関心事は地政学リスクである。欧州鉄道産業連盟(UNIFE)とコンサルティング会社のローランド・ベルガーはイノトランスの会場で2022〜2027年における世界の鉄道市場の成長予測を発表したが、その内容は「年平均3%程度で成長する」としつつ、「アメリカとイラン、ロシアとウクライナなどの地政学リスクが不透明要因であり、ポジティブな市場環境への脅威となる」というものであった。

では、緊張が高まる米中対立は世界の鉄道市場にどのような影響を与えるのか。会場での発表後、ローランド・ベルガーのフィリップ・グロシェ氏に質問すると、「当社は中国でビジネスを行っているので、質問に答えるのは難しい」としたうえで、「中国国内の鉄道建設は米中対立に関係なく進むが、中国メーカーの国外での売り上げには影響があるかもしれない。ただ、地政学リスクというものは市場予測において必ずしも大きなファクターではない」と話した。

今後は速さと環境の両立へ?

高速鉄道の営業用車両の展示が減った反面、ドイツ鉄道は2018年に導入した高速鉄道の試験車両「アドバンスド・トレインラボ」を会場に持ち込んだ。シーメンス製の高速鉄道車両にクノール・ブレムゼのブレーキ技術、シュタッドラーの列車制御システムをはじめ、各メーカーが開発中の最新技術がこの車両に搭載され高速走行をしながらデータを収集する。JR東日本の「アルファエックス」に似た車両だが、技術を提供するメーカー名が車両に大きく貼られているのが違いといえる。

また、次世代の高速交通インフラとして期待されるハイパーループは開発メーカーが車両モックアップを展示し、大勢の客を集めていた。中国中車も自社ブースで時速600kmの中国製リニアモーターカーの模型を展示していた。

環境性能の高さが重視される時代はしばらく続きそうだが、EUのバレアン委員が鉄道による主要国の都市間移動に時間がかかりすぎると嘆いていたように、高速鉄道のニーズは間違いなくある。5〜10年後のイノトランスでは速度と環境を両立させるような車両が登場するかもしれない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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