成長か停滞か、「世界の鉄道ビジネス」が向かう先 「イノトランス」で見えた環境、高速化、米中関係

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日本勢では日立が電気、ディーゼル発電、および蓄電池を組み合わせた3モード車両「ブルース」をお披露目した。電化区間では架線からパンタグラフを通じて電気を取り込み、非電化区間ではディーゼルエンジンが発電した電気を使って走行する。ディーゼルエンジンが駆動するため温室効果ガスの発生は避けられないが、「二酸化炭素の排出は従来車両の半分にできる」とプロジェクトを担当した日立レールイタリアのアルカンジェロ・フォルネリ氏が話す。

水素燃料電池車両の運行には水素を供給する水素ステーションの設置が不可欠。これなしでは水素燃料電池列車の普及は、絵に描いた餅となる。シーメンスは貨車に積まれたコンテナ型の水素ステーションを会場に持ち込んでいる。その点、大掛かりなインフラが不要な日立の車両は環境対策としては現実的な解決策といえる。ただ、温室効果ガスの排出がゼロというわけではないので、決定打とはいえない。

日立が水素燃料電池車両に無策というわけではない。JR東日本が現在試験運行を行っている水素燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッド車両「HYBARI」のプロジェクトに参加している。燃料電池装置はトヨタ自動車、ハイブリッド駆動システムは日立製作所が開発を担当し、JR東日本の子会社、総合車両製作所が車両を製造した。

存在感高める中国

中国も近年のイノトランスで次第に存在感を高めている。急速に進む国内の鉄道建設需要を取り込み今や世界最大の車両メーカーとなった中国中車はハイテク電気機関車を展示した。「環境性能の高さに加え、複数の電力システムを備える。欧州各国での相互直通運転が可能だ」(中国中車ドイツ事務所のリアン・タン次長)。

CRRC Electric locomotive
中国中車が展示した欧州各国での運用が可能な電気機関車(記者撮影)

同社の屋内展示では、イタリアのブルー・エンジニアリング社と共同開発した台車が目を引いた。「溶接せず一体型で開発した」と同社鉄道デザイン部門のトップを務めるマルコ・ボルロ氏が話す。従来の台車よりも軽量化されエネルギー効率が15%改善、騒音も2〜3デシベル低減するという。「現在は試験走行を重ねている段階。まず中国国内の営業運行で実績が得られたら、国外にも売り込みたい」と鼻息は荒い。

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