長寿「孤独のグルメ」食ドラマで圧倒的存在感の訳 ファンたちが語る10年間愛され続ける納得理由

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酒好きでもあるHさんは、番組最後に紹介される原作者、久住氏が実際に店を訪れ、酒を飲みつつ食べるコーナー「ふらっとQUSUMI」も楽しみにしている。「ファンの間では、あちらを本編と言う人もいます。食にこだわりがある久住さんは、参考にしたい上手な選択をします。『飲んだ後に食べるそうめんほど、いいものはないですよね』などと、食いしん坊の機微をわかった発言もいい」。

共感型

新聞社で働く61歳の間島英之さんは、もともと原作を読んでいて、ドラマ化を知って見始めた。「五郎さんは、『飯ぐらい好きに食わせろ』というスタンスじゃないですか。僕も、おにぎりと牛乳を組み合わせるのが好きなんですが、人に気持ち悪いと言われるので、こっそり食べる。五郎さんに共感します」と間島さん。

「谷口さんが亡くなって原作は更新されない。でも、ドラマには久住さんがかかわっているので、原作にない話もちゃんと『孤独のグルメ』の世界観になっています。また、有名な俳優さんがちょい役で出ているなど、ていねいに作っているから人気が高いのではないでしょうか」と間島さんは分析する。

「そしゃく音もちょうどいい」BGM感覚で流している

男性ファンは、自分を投影する楽しみもあるようだ。女性ファンはどうだろうか。

生活共有型

レシピサービス会社で働く30代の谷恵里奈さんは、「ふつうのグルメ系ドラマは、この1皿で死んでも構わない、など特別な設定が多いですが、このドラマは私が明日でも食べに行ける料理が紹介されますし、松重さんも、『隣の席にいるかもしれない』と思わせる自然体です。そしゃく音もちょうどよくて、食べ方も途中からガツガツ食べるなど、上品すぎない。すべてがちょうどいい感じがします」と分析する。

放送で大げさな音が出ないこともあり、アマゾン・プライムで配信されている過去の番組を、BGM的に流しっぱなしにして部屋で過ごすこともあるという。

谷さんは、番組発の流行現象が多いことも指摘する。「ユーチューブのVログで、ふだんのご飯を食べている動画がここ数年はやっていて好きなんですが、それは『孤独のグルメ』が好きな人が多いからではないか、と思います。五郎さん語録もネット・ミーム化しています」。

グルメ漫画評論家の杉村啓氏にも、番組の魅力を読み解いてもらった。

「根底にあるのは、おいしさを伝えるのに成功していること。松重豊さんは食べるときも背筋が伸び、箸で一口分ずつ食べるなど、細かい所作がきれいで人を不快にさせない。カメラも口の中を写さない。ネクタイをしながら食べていたのが、途中から腕まくりするなどしてかき込みますが、その時間も案外短いんです」と杉村氏は話す。

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