東急、北海道豪華列車「3年目」の手応えと課題 運行区間の拡大には地元の協力が不可欠だ

拡大
縮小

存廃問題が浮上している北海道新幹線の並行在来線区間となる函館―長万部間については、首都圏と北海道を結ぶ貨物列車の幹線ルートになっている上に、この路線がなくなってしまうと車両の北海道への回送ができなくなることから、クルーズ列車の運行が物理的にできなくなる懸念もある。

しかし、東急の松田部長は「貨物列車による物流のメインルートまでも廃止にしてしまうことは考えにくい」という見方を示している。

クルーズ列車の運行を行う意義

東急が北海道でクルーズ列車の運行を行う意義について、松田部長は「東急グループのノウハウを活用して地域の皆さんと共にどう地域を盛り上げていくのかということが基本的な考え方で、鉄道事業者としての思いを持って取り組んでいる」と話す。

さらにこう続ける。「最終的には線路が残ってさえいれば、柔軟な発想でいろいろなやりかたはあるのではないか。伊豆のザ・ロイヤルエクスプレスについても、貨物列車の扱いにして電源車といっしょに北海道まで輸送し、JR北海道のディーゼル機関車を連結して北海道の非電化区間で営業運転をするという発想は、最初は誰も思いつかなかった」。

すでに廃止の方針が決定された並行在来線の長万部―小樽間については、えちごトキめき鉄道社長の鳥塚亮氏らが特定目的鉄道としての再生を提唱し、草の根的な活動を始めている。

特定目的鉄道とは、観光目的に特化した鉄道の事業区分で、同区間の線路を残しておき必要な時に観光列車などを走行させ観光振興に役立てようというのが構想の基本的な考え方だ。こうした構想に賛同の意を示している地元の住民団体もあるという。

関係者の柔軟な発想力と一丸となった行動力が北海道の鉄道の未来を切り開く。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT