東急、北海道豪華列車「3年目」の手応えと課題 運行区間の拡大には地元の協力が不可欠だ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした沿線各地でのクルーズ列車に対する盛り上がりと関心の高さもあり、東急の松田部長は「ザ・ロイヤルエクスプレスの北海道での運行は、地域の様々な方々の賛同や協力があってこそ実現することができた。ダイヤや鉄道施設などの課題がクリアになり地域が一緒になって前向きに旅を作れる状況になれば他の路線でも運行ができる可能性がある」と意欲を見せる。

ここで言う地域とは、単純に自治体がどうこうという話ではなく民間も含めた地域の関係者を意味し、他の路線への運行拡大については、その地域に東急のスタッフ陣と一緒になって旅の舞台を作りたいという熱量を持った人たちがいるかどうかが重要になりそうだ。

こうした北海道東部での盛り上がりに対して複雑な思いを持つ地域関係者もいる。北海道新幹線の並行在来線のうち長万部―小樽間については輸送密度が2000人を超えている余市―小樽間も含めて北海道庁により強引に廃止の方針が結論付けられた。余市観光協会会長の笹浪淳史氏は、「余市をはじめとした後志地方も雄大な自然に加え海や山の幸など観光資源に恵まれた地域。もし話を聞いてもらえるのなら鉄道が残っているうちに名乗りを上げたい」と一縷の望みをかける。

運行継続の懸念事項

一方で、今後も北海道での運行を継続していくにあたっては懸念される課題もある。それは全国のローカル線の見直し問題と北海道新幹線の並行在来線問題だ。

全国のローカル線問題については、国土交通省の「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」で、この7月に「平常時の輸送道度が1000人未満のJR線区を対象に仮称『特定線区再構築協議会』を設け、協議を進めることが適当」という提言が取りまとめられた。北海道東部ではほとんどの路線がこの「平常時の輸送道度が1000人未満」に該当している。

北浜海岸でおもてなし活動を行うMOTレール倶楽部顧問で網走市議会議員の近藤憲治氏は、こうした状況の中でも、網走駅が始発となる釧網本線と石北本線を国内屈指の観光路線に育てていく意思を示している。

「鉄道を軸にした沿線が豊かになるまちづくりを、住民、自治体、鉄道事業者が知恵を出し合って具体的な行動を起こしていくことが重要で、今後は路線単位での単純な収支の視点だけではなく、経済波及効果も含めた費用便益分析による鉄道の多面的な評価も必要になる」

また、「北海道東部は日本の食糧生産拠点であることから農産物などを効率的かつ大量に輸送する手段として、モーダルシフトの観点からも各路線の物流ルートとしての存在意義も改めて議論していきたい」と今後の構想を語る。

次ページ貨物列車ルートとの関連は?
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事