別の角度でも検証しておこう。2011年の築31年以上の取引割合は18.2%から、10年後の2021年は29.7%で11.5%増えている。この傾向は過去の供給年別のストック分布から、加速化が予測される。なぜなら、築年ごとに1年に市場に売り出される割合はほぼ決まっていて、築年での供給分布は近年の大幅減少の傾向を反映するからだ。
そうなると、今後10年でこれまで以上に築古の取引割合は増えそうで、2031年に築31年以上の取引割合は少なくとも40%を上回ることは確実だ。今後は中古市場では築30年超えの取引が主役になるということだ。
中古取引において、築年数は大きく変化するが、変わらないものがある。それは面積だ。成約した平均面積は30年ほど前から64㎡前後で安定している。単価が高くなっても中古での希望される面積は変わらず、最近の建築費の高さから新築の面積が小さくなる傾向とは異なっている。
この64㎡というのは、投資用のワンルームなども含んでいるので、ファミリー世帯のニーズは実質的には70㎡以上と考えたほうがいい。とくに、2001~2003年の最もマンション価格が割安だった時期は面積も広めだったため、この時期のマンションの人気は相対的に高く、それが取引件数に表れている。
中古での在庫の回転がいいのは築6~20年(2001~2015年竣工)であり、築5年までの物件は価格の高さと新築との比較検討の中で、やや販売に苦戦する傾向にある。
築古になるほど値落ちが激しいということはない
取引件数はあっても心配なのは、その取引価格だ。築古は二束三文でしか売れないというのでは件数が多くても意味がない。
この10年の中古取引単価の高騰は平均して54%増だが、築31年以上も50%と同様に値上がりしている。築5年までが75%増、築10年までが63%増と比較すれば劣るが、決して相場の高騰の波に乗れていないわけではない。築古になるほど値落ちが激しいということはない。2001~2003年の面積が広めの物件のポテンシャルがそうさせていると考えている。
取引価格帯別に成約件数を見ると、相場価格が上昇したことを受けて、5000万円以上の成約価格帯が軒並み増えている。2011年と2021年を比較すると、5000万~7000万円が3.6倍、1億円以下が7.3倍、1億円以上が10.7倍増えている。百分率の割合で見ても、5000万~1億円が主要取引帯となり、在庫の回転率もいい。
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