中央快速線で再注目「2階建て車両」なぜ投入する? 展望を楽しむためか、それとも混雑対策か

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そのため、その時間帯の運行からは早々に撤退してしまい、休日のホリデー快速や臨時での使用が主になってしまった(一部の湘南ライナーでも使用していた)。そして残念ながら利用者の減少によって、2021年に定期運用から姿を消した。

一方、1989年に登場していた近郊形電車211系による2階建てにしたグリーン車は好評で、乗車券とは別にグリーン券を購入することにより、快適に通勤できるサービスは現在でも続いている。

グリーン車のみ2階建てにすることで、編成全体の乗降時間を緩和している。当初は東京口を走る東海道線のみだったが、のちに横須賀線や総武快速線、宇都宮線、高崎線、湘南新宿ライン、常磐線にも広がり、2006年度からは常磐快速線のE531系にグリーン車制度が新設され、同時に2階建てグリーン車が登場している。また2015年に開業した上野東京ラインにも導入されている。

富士急行線に2階建てグリーン車が乗り入れる?

さて、冒頭でもお伝えしたとおり、いま再び、2階建て車両の導入に注目が集まっている。中央快速線で2階建てグリーン車を組み込み、12両編成での運転を行う予定だ。

JR東日本としてはいわゆる通勤タイプの列車にグリーン車を増結するのは初の試みである。元々中央快速線は、東京―高尾間が主な運用線区だが、立川から分岐して青梅方面へ。また、高尾から先の山梨県の大月、さらにはそこから富士急行線に直通して、河口湖駅まで行く列車もある。

JR東日本に問い合わせたところ、今のところ富士急行線に直通するグリーン車の設定はないとのことだが、もし今後設定された場合は、「普通列車のグリーン車が他社線に乗り入れる」という、貴重な直通サービスにもつながってくる。これは、ぜひ検討してほしい。また大月以遠(例えば甲府まで)の運用もあっても良い。

さまざまなことを考えると、中央快速線に2階建てグリーン車の需要があることは間違いない。そろそろサービス開始の詳細な発表を期待したいところだ。JR東日本は「サービス料などの具体的なサービス開始の日程は調整中」としているが、今から期待してしまう。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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