友人がいない人は「おみやげ関係」がわかってない 「本当の友達って何」と悩む17歳への沁みる言葉

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さて、あさひさん。長い文章になりました。

僕は中学時代、「友達のふりをする苦痛」と「ひとりのみじめさ」を天秤にかけて「ひとりのみじめさ」を取りました。グループから抜けて、ひとりでもいいと決意したのです。

それでも、何人かはときどき話しかけてきてくれました。ひとりになってさびしい時に、話しかけてくれるだけでも、それは僕にとって「おみやげ」でした。

そういう時、自分はどんな「おみやげ」が渡せるだろうかと考えました。

相手にとって何が「おみやげ」になるかを考えることは、つまり、相手を理解しようとすることです。音楽に興味のない人にいくら最新の音楽事情を話しても、それは「おみやげ」になりません。自分が興味あることと、相手が興味あることが違うことはよくあります。

相手のことを思って「おみやげ」を渡すうちに

そうやって、考えながら「おみやげ」を渡しているうちに、ひとり、本当の友達ができました。たったひとりでしたが、さびしさもみじめさもなくなりました。じつは、彼も「ひとりのみじめさ」を選んで、グループから抜けた人間でした。

あさひさん。これは僕の場合です。

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あさひさんは「友達のふりをする苦痛」と「ひとりのみじめさ」を自分で天秤にかけないといけません。焦らず、ゆっくり考えてください。

そして、「この人と本当の友達になりたい」と思う人がいたら、「自分はどんな『おみやげ』を渡せるんだろう」と考えるのです。

「おみやげ」は押しつけるものではありません。相手がいやがるものでもいけません。

相手がもし、あさひさんの「おみやげ」を受け取る気持ちがないようなら、あきらめるしかありません。ただ、その人がくれた「おみやげ」に感謝していること、うれしかったことは伝えましょう。

相手への「おみやげ」を考えることは、人間を理解しようとすることです。それは決してムダな努力ではないです。

その努力は、あさひさんを成熟させます。人間を見る目を養い、相手の気持ちを察することができるようになります。

そんな素敵な人は、みんなが友達になりたいと思う人なのです。

鴻上 尚史 作家・演出家

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こうかみ しょうじ / Shoji Koukami

1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。95年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞受賞。ベストセラーに『不死身の特攻兵~軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)、近著に『何とかならない時代の幸福論』(ブレイディみかこさんとの共著/朝日新聞出版)、『演劇入門 生きることは演じること』(集英社新書)などがある。月刊誌「一冊の本」(朝日新聞出版)、ニュースサイト「AERA dot.」で『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』を連載中

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