激増する「不起訴の理由が不明」記事が大問題な訳 凶悪犯罪でも真相が水面下に潜ってしまう

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もっとも、以前からこの問題は各地でくすぶっていた。

例えば、読売新聞は2013年3月20日朝刊(大阪本社版)で「不起訴の理由 非公表/逮捕者 名誉回復に影響」という大型記事を掲載。「検察庁が、事件の容疑者を不起訴にした際、『起訴猶予』『嫌疑不十分』などの種類や、その判断の理由を公表しないケースが相次いでいる」「(不起訴の)種類が伏せられると、犯罪に関わったのか、無関係なのかがわからない」と指摘した。

記事によると、大阪地検は2013年2月までの1年間、報道機関から不起訴に関する説明を求められた107件のうち約6割、65件で不起訴の種類を公表しなかったという。それでも、ほぼ全件について理由を説明しないという現在の姿勢ほど、検察はかたくなではなかったと思われる。

現場の記者たちはどう対応しているのか

では、不起訴の理由を説明しない検察に対し、記者たちは現場でどう対応しているのだろうか。検察側の対応に大した疑問も持たず、「わかりました」とだけ言って、すごすごと引き下がっているのだろうか。

不起訴の理由を取材することは、事実関係の確認だ。「調査報道」といったレベルの話ではなく、“玄関取材”に類するものだ。しかし、こうした基本的な事実さえ取材できないのだとしたら、取材力の劣化も極まったというほかはない。

こうした問題について、熊本日日新聞の司法キャップ植木泰士記者(33)に話を聞く機会があった。植木記者は連載企画「くまもと発・司法の現在地/不起訴の陰影」(今年6月掲載)の取材班リーダーである。

「不起訴理由を説明しないのは、明らかに不当だと思います。熊本地検では、記者が不起訴理由を尋ねてもゼロ回答ばかり。秘密主義がどんどん進んでいる。不起訴にするということは、容疑者を公開の法廷で裁かずともよいということ。その判断は、いわば、検察による“事前裁判”です。検察官が裁判官の代わりになってしまっている。その割合(不起訴率)が7割を超えているというのも異常ではないでしょうか」

熊本日日新聞のこの企画は、まさに「不起訴理由を開示しない検察」の問題を取り上げたものだ。連載の狙いは明確で、1つは、不起訴率が7割にも達する中、その理由を開示しないことは“検察による事前裁判化”を容認することにつながるのではないか、との指摘だ。

もう1つは、犯罪の証明がなかった「嫌疑なし」も明らかにされないため、捜査の不手際や誤認逮捕といった警察・検察にとって不利な事態が埋もれてしまうのではないか、というものだ。

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