J2岡山と地元バス「どちらも正念場」コラボの狙い 降車ボタンを押すと「ゴーーール!」の声が

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また、卒業式シーズンの3月には沿線の学校の先生らによる卒業生への寄せ書きを掲示した「贈る言葉ッス」を運行。学生などの利用が8%増え、ネット上での反響も従来より多かったという。6月は梅雨時に合わせ、車内でタオルや傘袋、雨にちなんでアメを提供するバスを走らせ、乗客が9%増加したという。

ホイールはサッカーボール模様に塗装した(記者撮影)

限定された便のバス乗客が4割増加しても、全体から見ればわずかな数であることは確かだ。ただ、地方都市としてはバスを含む公共交通網が比較的充実している岡山市でもバスの交通分担率は2%といい、「100人に2人しか利用していない」(松田社長)のが現状だ。今年実施しているプロジェクトも、大幅な旅客増ではなく「月に1回以上バスに乗りたくなる仕掛け」をつくることを目標としている。「なんとか努力をして、せめて100人中2人から4人、100回に2回から4回に乗車を増やしたい」のが切実な願いだ。

地方交通会社の1割「半年以内に限界」

近年、JR各社が相次いで赤字線区のデータを公表し、地方公共交通の苦境に注目が集まっている。JR線の存続問題に関心が集中しがちだが、地方の鉄道、バス会社などはより深刻な状況に陥っている。

両備HD会長の小嶋光信氏が代表理事を務める(一財)地域公共交通総合研究所が今年6月に全国の鉄軌道・バス・旅客船事業者約500社に行ったアンケート(回答率約2割)によると、コロナ前と比べて輸送人員が3割以上落ち込んでいる事業者は約3割に達しており、全体の約2割は債務超過に陥っていると回答。さらに、公的補助・支援がないと1割の事業者が半年以内に経営の限界、2年以内に8割が経営の限界が来ると予想しているという。

廃止されれば「地図から線路が消える」鉄道に比べ、バス路線の減便や存続問題は注目されにくい。J1昇格へ”正念場”のファジアーノ岡山を応援するバスは、路線バス存続の”瀬戸際”を世間に知らせ、公共交通を次世代へとつなぐ効果的なパスになるだろうか。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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