
HILLOCK(ヒロック)初等部 校長
公立小学校で14年勤務した後、2021年3月に東京・世田谷にオルタナティブスクール、ヒロック初等部を創設、22年4月に開校。専門教科は国語。特別支援学校でのインクルーシブ教育や発達の系統性、学習心理学に関心を持ち、教鞭を執る傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士号を取得。特別支援2種免許を所有。プログラミング教育で全国的に有名な東京・小金井の前原小学校では、研究主任やICT主任を歴任するなどICTを活用した教育にも高い関心と経験を持つ。著書に『子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)、共著に『before&afterでわかる!研究主任の仕事アップデート』(明治図書)、『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『個別最適な学びを実現するICTの使い方』(学陽書房)などがある
(撮影:今井康一)
GIGAスクール構想が一律一斉の学習方法を一変させる
しかし、ここにきて学校現場には大きな変革がありました。GIGAスクール構想といって、子どもたちに1人1台のテクノロジー端末とインターネット環境が整備されたのです。
実はこの出来事は、単なるICTスキルの獲得にとどまらず、わが国150年の学校教育の歴史から見ても大きな転換点なのです。例えば「教科書を自力で読み解けない」という問題について考えてみましょう。
今日、インターネット上では無料で閲覧できる解説動画教材が多くあります。すでに理解している子は飛ばして次の単元、次の学年に進んでいくことも可能ですし、再生速度を変えてゆっくり聞いたり、一時停止したり、巻き戻したり、再度視聴することさえ可能というわけです。確かに、リアルの場(=教室)で聞くよりも注意が散漫になったり、理解しにくいという面もあるでしょう。しかし、それを補って余りあるくらいの付加価値もあるのです。
一人ひとりが動画で学べるような環境を用意できた今、みんなが同じペースで学んでいく必要とは何か、改めて考えていく必要があると思います。程度こそありますが、30人以上の子どもがそれぞれのタイミングで質問しても、相談しても、問題を解いたり答え合わせをしたりしても、問題ないのです。