台湾有事を見据え水面下で進む日米台の軍事協力 パラオ演習に台湾巡視船と海自護衛艦が参加

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興味深いのは、合同演習参加は台湾にとって軍事機密だが、中国大陸のネット・サイトに「安平艦」と「台南艦」の台湾・パラオ往復の航跡を示すリポートが出た。それによると、「台南艦」は2022年7月16日午前2時にパラオに到着し、3日後に台湾への帰途についたことが記載されたという。中国側が台湾艦船の行動を掌握していることがわかり、台湾では機密情報が中国大陸に漏洩しているのではとの疑念を呼んだ。

合同演習の意義について、台湾ケーブルテレビ「TVBS」の記事は、台湾・中正大学の林穎佑・准教授の「アメリカ沿岸警備隊がアメリカ海軍とともに行動し、台湾海峡周辺で台湾海巡防署とともに合同演習すれば、新しい作戦方式になる」とのコメントを掲載した。

台湾海巡防署は、合同演習への参加については「ノーコメント」。「台南艦」が演習にどのように参加したのかは明らかではない。ただアメリカ病院船を中心とした演習では、各国の軍艦船と巡視船艇が連携して、被害艦船の乗組員救助や、負傷者を病院船に移送する活動が行われたと推測される。

同時に台湾艦の参加は、演習が「台湾有事」を想定した可能性を示唆している。台湾と国交のない日本の自衛隊が台湾側と軍事的連携活動に参加したとなれば、法的にも政治的にも問題化しかねない。今後もアメリカ軍を「要」(かなめ)に、日米台の軍事協力がさまざまな形をとり、水面下で進行する可能性がある。

自衛隊を補完する海上保安庁

日本で海上保安庁は、海難救助活動や尖閣諸島(中国名 釣魚島)でのパトロールなど、非軍事活動組織というイメージが強い。だが、アメリカの沿岸警備隊は陸海空3軍と海兵隊に続く「第5の軍種」とされ、大統領令によって海軍の一部として運用される「海軍補完物」だ。

海上保安庁はアメリカ軍政下の1948年、沿岸警備隊をモデルに創設されたから性格は似ている。自衛隊法には、首相の指示によって海上保安庁が防衛省の指揮下に入る規定があり、有事では自衛隊の補完組織になる。

巡視船が自衛隊の指揮下に入り、「武力行使」した実例を紹介する。1999年3月23日、佐渡島西方18キロメートルの日本領海内で2隻の不審船が見つかった。海上保安庁は巡視船艇15隻および航空機12機を動員、不審船が停船命令に応じなかったとし、海上自衛隊のイージス艦が初の「海上自衛隊行動命令」を発動して射撃を開始。同時に巡視船が1000発以上の機銃射撃をした。「準軍事組織」という性格が理解できると思う。

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