来年10月、「消費税免除」切れ160万社混乱の必然 30年超放置「消費税を手元に残せる」は終了へ

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――とはいえ、免税事業者からしてみれば、取引先からの消費税分の値下げ要求や、それを拒否した際には取引中止をちらつかされるなど、現場ではトラブルが起きることも想定されます。

吉澤インボイス制度は、消費者向けのビジネスをしている免税事業者には、ほとんど影響はないとされています。例えば、学習塾や医療機関、理容業、ゲームセンター、パチンコ店などが該当します。こうしたサービスを利用する消費者は、必要経費算入を目的として領収書を求めません。そのためインボイスの発行が不要で、免税事業者のままでいても構わないのです。

不動産の大家も、アパート・マンションなど居住用の賃貸は消費税が元々課税されていませんのでインボイスの発行は不要です。ただビルなど事業用物件や駐車場は消費税の課税対象です。インボイス制度が導入されれば、テナントは、大家が免税事業者であれば、消費税分の値下げ、または課税事業者への変更を要請すると考えられます。

個人タクシーも、客がプライベート利用なのか社用で経費算入を目的としているかで変わってきます。免税事業者でも前者なら問題ありませんが、後者であれば客がタクシーを利用後に経費算入できないことを知って、揉めるということもあるでしょう。

30年超放置の不平等は解消方向に

――どうすればこの問題を穏当に解決できるでしょうか。

吉澤:取引先が免税事業者よりも優位な場合、取引先が課税事業者へ変更しないことを理由に取引を停止することは、独占禁止法による「優越的な地位の濫用」に抵触する可能性はあります。

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しかし、そもそもインボイス制度が導入される一番の目的は、不平等の解消です。消費者は自分たちが払った消費税は、当然、国に届いているものと思っている人が多くいます。しかし実際には、免税事業者の手元に残っていることを知れば怒りの声を上げるでしょう。

消費税を納めている課税事業者も不平等な競争を強いられていました。これらの状況を鑑みると、ケースバイケースではありますが、基本的にお勧めするのは課税事業者になることです。先ほど述べたように簡易課税を選択できるなど経過措置も用意されているので、負担増を抑えることもできます。

日本では30年以上、消費税を納めない免税事業者からの仕入れについても控除が認められていました。日本の消費税に該当する付加価値税制度がある欧州では、このようなことは認められていません。混乱は必至ですが、通らなければならない過程だと思います。

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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