国全体で追悼する「エリザベス女王国葬」の凄み 19日までは一般市民も直接お別れができる

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女王の夫フィリップ殿下は昨年4月、ウィンザー城で亡くなっている。享年99歳。73年余、連れ添ったパートナーだった。死後、その遺体は礼拝堂の地下にある「ロイヤル・ボールト」に保管されていたが、女王の死に伴い、礼拝堂内に移動される。2人の遺体は同じ場所で眠ることになる。

女王の死を「国全体で追悼する」。これがイギリス流である。

 国葬には議会の承認が必要

国を挙げての葬式は、政治家の場合はめったにない。イギリスに相当の功績を与えた人物で、かつ議会の承認を経て、国葬が可能になる。最後にイギリスの政治家が国葬となったのは、1965年、チャーチル元首相である。第2次大戦中、国民を鼓舞し、陣頭指揮をしながら勝利を実現させた名宰相だった。チャーチル元首相の国葬には、エリザベス女王のほか、王室メンバーが参列している。

政治家以外では、物理学者で数学者のアイザック・ニュートン氏、アメリカ独立戦争に参加しナポレオンと戦ったイギリス海軍の英雄、ホレーショー・ネルソン堤監、ウェリントン公爵の葬儀が国葬として行われた。

振り返ってみると、父の急死によって、25歳でその後を継いだエリザベス女王は、21歳の時に「すべてを国民とイギリスのために捧げる」と宣言していたが、70年の治世中、まさにこの精神がにじみ出たのが公務の数々だった。

メディアインタビューには一切応じず、黙々と女王という「仕事」に専念した。その生真面目さは「禁欲的」とも評された。王室を批判する人でさえも、女王の生涯を通じての献身度には敬意を表さざるを得ないだろう。

即時に情報が拡散するこの時代に、数日間もたった1人の死のために国の行事が続くというのは大袈裟とも、古めかしいとも思えるが、女王の人生に最大の敬意を払い、国民が1つになる機会とも言える。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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