稲盛和夫さんの『生き方』が強烈に支持された訳 日中で累計730万部の著書はどう広がっていったか

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もう1つ、23歳の女子学生。「生まれて初めて本を読んで涙を流しました。稲盛さんの温かい言葉で、まるで実際に、大丈夫だよ、と言われているみたいで感動しました」。自分がそれまで気づいていなかった真理に、この本を介して接することができたのだと思います。

部数は順調に推移し、刊行から1年で21万部。2年半後の2007年3月には50万部を突破しました。

この年の6月、ホテルオークラで『生き方』50万部突破を祝う会を開催しました。当時、中国大使だった中国の現・外務大臣の王毅さん、当時の民主党の小沢一郎さんや前原誠司さんなど政財界から、また作家の瀬戸内寂聴さん、堺屋太一さん、竹村健一さんなど多くの人がお見えになりました。

翌2009年、大きなニュースが流れます。当時の鳩山由紀夫総理大臣から、稲盛さんに日本航空(JAL)再建のため、会長就任の要請があったと報じられたのです。

JAL再建で『生き方』に書かれていることを証明

ただ、私は心配していました。JAL会長に就任されたのは78歳です。この年でなんとも難しい役割を担うことになった。もしも失敗したら、輝かしい経歴に傷がつきかねない。しかし、稲盛さんは、そこで働く従業員と、利用する消費者、ひいては日本社会のため、とお受けになりました。しかも、無給で、です。私心なく、まさに自利利他の心でお引き受けになった。こんなことを誰ができるでしょうか。

それだけでも驚いたのですが、わずか2年でJALは奇跡の復活を果たし、再上場するのです。『生き方』に書かれていることを、まさに実践するだけでなく、証明されたのです。

JAL再建の報道が流れる中、再上場の翌年2013年1月には90万部を突破。「2012年 社長の選ぶ社長」の1位に選出されるなどして、3月にはとうとう100万部を突破しました。

11月、『生き方』100万部突破を祝う会がホテル椿山荘東京で開かれました。このときには、盛和塾とも関わりの深い松山バレエ団が、オリジナルのバレエの舞台を披露してくださいました。

『生き方』は現在国内では150万部という驚異的な部数になっていますが、中国でも2005年に刊行され、現在580万部の大ベストセラーになっています。2008年のいわゆるリーマンショックを契機に、アメリカ流の資本主義ではない、ロールモデルになるような経営のあり方を彼らは求めていたのだと思います。

聞けば、大学の教材にも載っていたそうです。日本でもニュースなどでよく知られる中国の報道官、趙立堅さんは稲盛さんが亡くなった発表があった日、「哀悼の意を表します」と言っていました。中国では、稲盛さんの死は、まさにトップニュースでした。

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