バレリーナ「加治屋百合子」歳を重ねて得たもの 20年以上、第一線で活躍する彼女が語ること
── そうなんですか! それって、いろいろな演出の『忠臣蔵』がある的なイメージでしょうか。
加治屋:『忠臣蔵』以上に違いは大きいかもしれません(笑)。ラーメン店や寿司屋が店によって違うといった感じでしょうか。「白鳥の湖」というタイトルが同じだけで、演出も衣裳も照明も、そして、音楽のアレンジも、バレエ団によって違ってきます。もちろん、踊るダンサーによっても違います。
── ちなみに、ヒューストン・バレエの「白鳥の湖」はどんな特徴があるのでしょう?
加治屋:芸術監督のスタントン・ウェルチが振り付けたバージョンで、私は主役のオデット/オディールを踊ります。通常、ひとりのダンサーが、白鳥のオデットと黒鳥のオディールの2役を演じ分けるのですが、ヒューストン・バレエでは、さらに人間の乙女という役柄も演じます。
それぞれの役で、衣裳も表現の仕方も違います。美しい女性たちの群舞に加え、男性たちのダイナミックなグループダンスも見どころのひとつなので、ぜひご覧いただければうれしいです。ヒューストン・バレエが日本で公演を行うのは今回が初めて。バレエ団のメンバーは、「バケットリストのひとつが叶った」と言って来日を心待ちにしています。
芸術鑑賞に正解はない
── ところでバレエを見慣れていないと、「バレエってどんな風に鑑賞すればいいの?」と身構えてしまう人も多いと思います。ぜひバレエ初心者がバレエを鑑賞するにあたってのアドバイスをお願いしたいです。
加治屋:私は、バレエに限ったことではなく、芸術鑑賞に正解はないと考えていて。あらすじは存在しますが、「私はこんな風に感じた」といった感じで、それぞれの解釈で楽しんでいただければと思います。あらすじを確認してから鑑賞してもいいし、あらすじに目を通さず、「この王子はきっとこんなことを言っているんだろうな」なんて、想像しながら観てもいいかと。それぞれ別の楽しみがあるはずです。
── バレエ鑑賞は、デートにも向きますか(笑)?
加治屋:すごくいいと思いますよ! バレエに誘ってくれる男性って素敵だと思います。お洒落をして劇場に行けることも、女性にとってはうれしいポイントかもしれません。舞台芸術は鑑賞したら終わりではなく、終演後には食事をしながら感想を伝え合うという楽しい時間も待っていますし。