バレリーナ「加治屋百合子」歳を重ねて得たもの 20年以上、第一線で活躍する彼女が語ること

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(写真:内田裕介(Ucci))

1、2カ月のつもりが6年間滞在

── 10歳で中国にバレエ留学! まったくイメージができませんが(笑)。 

加治屋:父が仕事の関係で上海に行くことになり、両親から、全寮制のバレエ学校があるから行ってみないかと勧められたんです。当初、両親は、「1、2カ月、文化交流のような感じで体験してみるのもいいだろう」という気持ちだったと思います……。

── それが6年間、滞在することになるとは……。生活はいかがでした? 

加治屋:レベルも生活環境も、いろいろすごかったです(笑)。私が留学したのは国立のバレエ学校で、中国人のクラスメートは“選ばれしエリート”ばかり。ただでさえ厳しいのに、クラスメートの親御さんは、先生に「厳しく叱って、ウチの子を一人前にしてください」とお願いしていたのを今でも鮮明に覚えています。

生活面も大変でした。当時の中国は、上海とはいえまだ発展前。蛇口をひねっても水が出ないことや、トイレの水が流れないことは日常茶飯事です。長期休みに、日本に一時帰国した時、家で蛇口をひねらず、ちょろちょろ出てくる水を使っている私を見て、母に、「百合ちゃん、日本では蛇口をひねれば、ちゃんと水は出てくるのよ」と言われました(笑)。

── なかなかハードな体験ですね。

加治屋:留学して1、2カ月経った頃、母が、「そんなに頑張らなくてもいいよ、帰ろう」と迎えに来てくれた時、私は「帰りたくない」って言ったんです。踊ることに目覚めていたわけでも、楽しかったわけでもありません。まだ、バレリーナになろうとも考えていなかった頃です。今思えば、子ども心に、せっかく始めたことをこんなに早くギブアップしていいのだろうかという思いがあったのかもしれません。 

── お母さん、感動されたんじゃないですか?

加治屋:いえ、びっくりしたみたいです。帰りの飛行機で泣いていたと聞きました。

── ちなみに、加治屋さんが、踊ることに目覚めたのは、いつくらいだったのでしょう?

加治屋:コンクールに出られる年齢──、13歳くらいの時だったと思います。

(写真:内田裕介(Ucci))
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