気づけばよく見る「パンサー」再ブレイクの必然 超売れっ子の彼らにも多くの苦悩があった

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とはいえ、早く知られたことの懸念点もあった。2012年に出演した『しゃべくり007』(日本テレビ系)で「ファンの“出待ち率”がナンバーワン」と紹介されて以降、ライブでアイドル的な人気を博す芸人というイメージが先行した。2015年、向井が吉本興業の「男前ランキング」(かつて月刊誌『マンスリーよしもとPLUS』に年1回掲載されていたランキング)で1位となったことからも、その空気感は十分伝わってくる。

だからこそ当人たちは、一気に引きずり下ろされる不安もひとしおだったに違いない。2016年に『王様のブランチ』のスタジオレギュラーを卒業(2021年4月、隔週午前中レギュラーとして向井が復帰)したあたりからトリオでの勢いは失速する。向井はインターネットテレビ局「AbemaTV」(現:ABEMA)で仕切りを任されることが多くなり、尾形は“体育会系のポンコツキャラ”が浸透してドッキリ企画や体を張った企画に励み、菅は猫好きが高じて動物番組や猫を扱った企画にたびたび顔を見せた。

この当時は、ちょうどハリウッドザコシショウが「R-1ぐらんぷり」(現:R-1グランプリ)で優勝し、バイきんぐ・小峠英二など遅咲きの芸人の活躍が目立った時期だ。

2016年5月に公開された『内村さまぁ〜ず SECOND』(Amazon Prime Video)では、2014年に向井が菅にLINEで「もう尾形さんとはやりたくない」と送っていたことを明かしている。トリオにメスを入れ、身を削ってでも化学反応を起こそうともがいていたのかもしれない。

中堅に差し掛かり始めたパンサーは、個々での活動こそ順調だったもののメディア露出の新鮮さはなくなっていた。

『アメトーーク!』でイケメンキャラを脱却した向井

そんな流れの中で2018年に転機が訪れる。『キングオブコント』でハナコが、『M-1グランプリ』で霜降り明星が優勝したのだ。この躍進は、翌2019年の「お笑い第七世代ブーム」へとつながっていく。

テレビ局が世帯視聴率から個人視聴率へとターゲットを移し始めた時期とも重なり、EXIT、宮下草薙、四千頭身、3時のヒロイン、ガンバレルーヤら若手も台頭。2020年にかけてバラエティーの顔触れが変化していった。

そんな時期に放送されたのが、『アメトーーク!』(テレビ朝日系・2020年2月27日放送)の「僕らビミョーな6.5世代」である。ジャンポケ・太田博久と斉藤慎二、かまいたち、三四郎・小宮浩信、さらば青春の光・森田哲矢、あばれる君とともにパンサーのメンバーとして姿を見せたのが向井だった。

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