まるで頭にかんざし「おいらん列車」は何に使う? 車両から突き出た多数の棒はどう機能するのか

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しかし、老朽化により4両が廃車となり、現在車籍を有しているのはJR西日本のオヤ31 31のみ。同車は1956年に連合軍専用部隊料理車オシ33 104を改造した。矢羽根は片側の車端部と台車中心から6.9mの2カ所に設置している。

オヤ31 31は近年稼働しておらず、網干総合車両所の一般公開などで時折見られるのみだった。今回の京都鉄道博物館の展示では、オヤ31形を間近で見ることができたほか、車内を開放した日もあった。

オヤ31 31の車内。矢羽根を取り付けている部分は室内に張り出していて、通路はとても狭い(寺尾武士撮影)

オヤ31形はもう1両、12も現存している。JR東海に承継されていたオヤ31 12は廃車された後、佐久間レールパークで保存されていた。その後佐久間レールパークの閉館に伴い、リニア・鉄道館に輸送されており、こちらはいつでも見ることができる。リニア・鉄道館では妻部分の矢羽根を展開した状態で展示されている。

現役の建築限界測定車「光おいらん」

建築限界の測定は定期的に行うことが望ましく、特に新規開業や電化開業では必須であるが、使用頻度がそれほど多いわけではないので、現在はトロッコタイプの建築限界測定車や、測定器具を使用するケースが多いようだ。

相鉄の保線車両用留置線に留置されているトロッコタイプの建築限界測定車(筆者撮影)

しかし、現在も稼働している建築限界測定車も存在する。それがJR東日本のマヤ50 5001で、1995年にオハフ50 2301を改造した。建築限界の測定には矢羽根を使用せず、CCDカメラが撮影した画像を分析するのが特徴で、車体から撮影箇所をライトで照射するため「光おいらん」と呼ばれている。

改造当初はスヤ50 5001で、塗装も現在と異なっていた。2005年に総合検測車East i-EやEast i-Dとの連結対応改造を行った際に自重が増加したため形式をマヤ50に変更するとともに、塗装もEast iに合わせて変更。2015年には車体の改造や床下機器の増設を行っている。

建築限界の測定にCCDカメラを導入したマヤ50 5001「光オイラン」(筆者撮影)

現在建築限界測定車を定期的に走らせているのはJR東日本だけ。それだけ管理する路線が多いということでもあるわけだが、今後とも活躍してもらいたいものだ。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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