個人投資家は「8月の米株急落」でどう動くべきか FRBも投資家も今は「さあ、どうしよう?」状態

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個人投資家の投資姿勢については、証拠金債務残高(信用買いの残高)の動きも参考になる。同残高は2021年10月に9186億ドルでピークをつけ、そこから今年6月の6834億ドルまでおおむね減少の一途で、株式への弱気姿勢が6月に陰の極に達したといえる。そこから7月は残高が6968億ドルにやや持ち直したものの、今は打診的に信用買いを行ったあと、「さあ、これからどうしよう?」というところだろう。

機関投資家のポジションも、前出の8月1日付コラムで書いたが、7月時点のバンク・オブ・アメリカによる機関投資家調査では、全資産に占める現金の比率は6.1%と高かった。これはリーマンショック時の5%台を超え、ITバブル崩壊時の2001年10月に並ぶもので、やはり機関投資家も歴史的な慎重さに陥っていたことがうかがえる。

その現金比率は8月時点の調査では5.7%に低下しており、機関投資家も資産配分の陰の極を脱して、じわりと株式などに資金を戻し始めたと推察できる。とはいっても、ようやくリーマンショック時並みになったにすぎず、株式などリスク資産を少し買った機関投資家も、「さあ、これからどうしよう?」と、悩んでいる状態だと考える。

目先の市場波乱に動揺しないことが重要

とすれば、方向感を見いだせていない投資家が多いため、短期的には今後もちょっとした材料で、株価や債券価格、為替相場が大きく反応したり、何の材料もないのに市況が揺れ動いたり、あるいは材料の好悪とは逆に相場が振れたりするだろう。

ましてや、「さあ、どうしよう?」と今後の金融政策に悩む連銀の一挙手一投足を、「さあ、どうしよう?」と悩んでいる投資家が推察しようというのだから、ますます混乱が深まりそうだ。

ただ、経済環境としては、前述のようにジワリとではあるが、インフレ要因は沈静化しつつある。またこれも述べたように、今すぐにでも利上げでアメリカの景気が一気に悪化するかのように騒ぐのも、やりすぎだ。年内の市場の動向を展望すれば、それほどよくはないが悪くもない投資環境に支えられ、株価の方向は上だと見込んでいる。長期投資家としては、目先の市場波乱に動揺しないことが重要だろう。

一方、短期投資家は、市況のわけのわからない激しい上下動を乗り越えないといけない。金利動向や企業収益面での材料と株式の物色動向の関係も、場当たりでバラバラだ。長期金利が上がる局面で成長株が買われたりするし、画像半導体大手のエヌビディアのように、よくない収益見通しの発表で同社や半導体各社の株価が上がったりする。

こうした市況の地合いにおいて短期投資で儲けることは、至難の業だろう。当面の短期投資において肝要なのは、大いに投資収益をあげることではなく、生き残ることだ。幸運をお祈りする。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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