ジム・ロジャーズ「現状では米中戦争は不可避だ」 「10~15年後の戦争」回避のためにどうすべきか

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ロジャーズ氏は続けます。

「最近になってアジア人に対する差別を違法とする法律が可決されたが、法律にしたからといって何も変わらず、憎悪や暴力は続いている。これを解決するには、残念だが時間が経つのを待つ以外にすべがない気がしている。同時に、時間は破壊的な影響を及ぼす可能性もあり、時間がもっと悪い方向に事を動かし、結果、実際の戦争を引き起こすこともある。ジョー・バイデン大統領のこれまでの対応で米中関係が改善される動きはまったく見られず、口先だけの社交辞令的な外交を続けているにすぎない。

中国はウクライナ侵攻に対する対応では意見表明を控え気味だが、今後アメリカが中国を最大の競争相手と定め、封じ込め策を打ち出してくることは認識しているはずだ。両国の対立がこれ以上エスカレートしないことを祈っている」

日本の対中戦略に対して、ロジャーズ氏は次のように述べています。

「中国が急激に成長し、アメリカ主導の国際体制を争う意思を鮮明にしたことで、米中間で貿易戦争が始まってしまった。だが私が日本のリーダーだったら、戦いを選ぶのではなく、どうすれば中国の成長に貢献し、ともに成長できるかを考えるだろう。ともに成長する道を見つけることが日本のためになる」

日本の「防衛費」をどう見るか

私が7月末に追加取材をした際には、安倍晋三元首相の事件に対しても言及していました。

「この事件による日本経済における変化としては、日本政府が防衛費にもっとお金を使うようになることが考えられる。それが安倍氏の悲願の一つだったからだ。日本人も、自分たちのことは自分たちで守らなければいけないと考えるようになるかもしれない。政府が防衛に投資をする感情的な動機を持つようになるだろう」

財務省によると、日本では「国の借金」が過去最大の1255兆円になったという報道があったばかりで、天文学的に負債が増え続けているのに、さらに防衛費負担が増えるのは苦しいところです。

今回、中国ミサイルが初めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下し、改めて目が覚め、自国の安全保障や防衛について考えたり、自分の財産の保全や家族をどのように守るかを再考した人も多いのではないでしょうか。

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