復旧へ青信号か、JR「肥薩線」支える地元の大奮闘 官民そしてJR九州、3者一体での取り組みがカギ

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肥薩線は決して輸送密度の高い路線ではない。被災前の1日当たりの輸送密度は、八代―人吉間で414人、人吉―吉松間はわずか106人だった。

さらに、八代市と人吉市の間には九州自動車道が通じており、現在は国道219号通行止めへの代替路措置として無料で通行ができることから、クルマを使えば両都市は30分程度でのアクセスが可能である。一方、被災前のダイヤでは八代―人吉間は特急列車でも1時間程度の所要時間を必要とした。こうしたことから「そのままバスに転換したほうが安上がりで便利になるのではないのか」という声も聞かれる。

これに対して松岡市長は、道路整備と鉄道復旧は全くの別次元という考え方を示す。「肥薩線は地元での誘致運動の結果、国が建設し開業させた鉄道。地域の発展は鉄道と球磨川の水運と共にもたらされたもので、肥薩線は地域にとっての誇りでもある。観光的な魅力も大きい」。

【2022年8月16日17時30分 追記】記事初出時、人吉―吉松間の輸送密度の数字に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

県のバックアップ体制も盤石

熊本県では、蒲島郁夫知事の考え方もあって豊肥本線が熊本地震からの復興を遂げることができたように、地元が「鉄道は必要」と言えば県は財源の面も含めて地元の要望に配慮した仕事をしてくれるそうだ。

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熊本県議会の溝口幸治議長も、熊本県として「沿線自治体に寄り添った対応をするために、現行制度の上で是正するべき点があれば、沿線自治体、県、県選出の国会議員が一丸となってチーム熊本として国に対して是正を求めてアタックをしていく」という姿勢を貫く。

肥薩線の鉄道としての復旧については実現の見通しが付いた状態となったが、今後は持続可能な鉄道路線の維持を図るためにどのようなスキームを実現させていくのかが大きな課題となる。

東北地方ではこの8月3日に発生した豪雨により、磐越西線で橋梁が流出したほか、他の路線でも橋梁や路盤の流出が相次いだ。肥薩線での取り組みは今後の被災路線の復興へのヒントになるかもしれない。

櫛田 泉 経済ジャーナリスト

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くしだ・せん / Sen Kushida

くしだ・せん●1981年北海道生まれ。札幌光星高等学校、小樽商科大学商学部卒、同大学院商学研究科経営管理修士(MBA)コース修了。大手IT会社の新規事業開発部を経て、北海道岩内町のブランド茶漬け「伝統の漁師めし・岩内鰊和次郎」をプロデュース。現在、合同会社いわない前浜市場CEOを務める。BSフジサンデ―ドキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ!地方創生への再出発」番組監修。

 

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