復旧へ青信号か、JR「肥薩線」支える地元の大奮闘 官民そしてJR九州、3者一体での取り組みがカギ

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「肥薩線again」は、沿線に住む有志の住民を中心に2021年夏に立ちあがった住民団体。代表を務める小澤光二氏は、「肥薩線に対して思い入れの深いメンバーが集まって、当初は球磨川第一橋梁だけでもどうにか残せないかと思い活動を始めました」と話す。球磨川第一橋梁は、1908年の部分開業時にアメリカ人技師によって建設された赤いトラス橋で100年以上の歴史を持つ現役の鉄橋だった。

小澤氏らが声を上げたことにより、沿線に住む人たちをはじめ肥薩線に対して思い入れのある関係者が活動に参加。その結果、全国から1万筆を超える署名が寄せられた。また「官民ともにそれぞれの『復旧』に向かって活動をしているので、協力関係を作りやすい」(小澤氏)。

人吉市内の温泉旅館で構成される人吉温泉女将の会「さくら会」でも、「肥薩線again」の署名活動に協力。有村政代会長は「肥薩線は、観光産業が基盤となっている人吉にはなくてはならないもので、復旧には地域の熱意を示すことが必要」。そうしたことから「さくら会でも署名活動をサポートし多く署名を集めた」という。

「さくら会」では、被災前まで人吉駅での「SL人吉」号のお出迎えやお見送りを行っており、SLが現役だった大正時代の雰囲気を再現したイベント「ノスタルジック人吉」も肥薩線開業100周年の節目となる2009年から毎年主催していた。

行政側も「アピール集会」を開催

有村会長の経営する人吉温泉旅館・清流山水花あゆの里でも「クルーズトレイン『ななつ星in九州』で料理の提供を行っていた」ほか、「JR九州の青柳俊彦会長もよく人吉に来てくれたことからJR九州とは長年にわたって良好な関係を築くことができた」。「最近ではJR九州の肥薩線復興担当の職員がよく人吉に来てくれて、地元の意見を聞いてくれて前向きに検討をしてもらっている」(有村会長)。

行政側でも、2022年3月には「JR肥薩線の復旧を求めるアピール集会」を開催し、人吉市長の松岡隼人氏をはじめ、地元球磨郡出身で前総務大臣の金子恭之氏も出席。「鉄道がなければ地域の衰退を招く」と全線の鉄道での復旧を訴えた。この集会は、事務局を務める人吉市役所から鉄道関係の団体や沿線自治体の担当課を通じて広く参加が呼び掛けられ、およそ350人が集まった。

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