ダイハツ「ウェイク」がたった1世代で終わる事情 タント上回る高さ183cmの大空間も決め手ならず
たしかに、ウェイクのほうが遊び心のある外観や、より上質な室内空間、そして快適性を整えた後席の設定など、開発する側からすれば差別化できたと思うかもしれない。
しかし、必ずしも頻繁に4人乗車で出かける訳ではない消費者にとって、後席の快適さを求める人は限られたのではないか。ムーヴ(現行モデルの高さは163cm)で狭いと思った人がタントに流れたケースは多かったが、さらに背を高くしてもそこに大きな魅力は訴求できなかったということになるだろう。つまり、その背の高さは過剰だったのかもしれない。
また、アトレーにはピックアップトラックのような荷台を持つデッキバンもあり、個別の用途に応じた多用途性はこちらのほうがわかりやすいかもしれない。
軽商用のホンダN‐VANは、それほどたくさん売れていない。だが、商用バンの域を超えた操縦性や乗り心地を体感させる。商用車にありがちな騒音は車内に届くが、イライラするようなうるささではなく、音質をうまく調整している様子がうかがえる。
夢を膨らませる何かがあったか
走行感覚は、元気いっぱいで、運転する面白さを覚えさせた。仕事用としての室内の多様性は、徹底した合理化の考えとともに、感嘆するほどだ。同時にまた、遊ぶ道具の運搬という視点に立った使い方でも、想像を膨らませる魅力を伝えてきた。そういう心を動かす何かが、ウェイクには欠けていたような気がする。
ウェイクは、商品企画の人たちが文殊の知恵を働かせて組み立てた仕様だったかもしれない。しかし、その人たちは、実際にキャンプへ行ったり、屋外で遊んだりすることを、自らの趣味として常々実践していたのかというと、そうした実感は伝わりにくかったように思える。
ダイハツのなかでの新種という意味で、ウェイクは企画されたのだろう。だが、訴えかける何かが1つ欠けていた気がする。製品としては実直につくられ、購入した人は納得したかもしれない。しかしながら、広く消費者の心を奪い、買わないまでも夢を膨らませるまでには至らなかったのではないか。
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