ジム・ロジャーズ「米ドルは安全な通貨ではない」 アメリカは今後衰退の道を辿るかもしれない

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「現在は、確かにドルが世界の基軸通貨だが、いずれは違う通貨になるだろう。現在、多数の国がドルで借金(債券の発行)をしているが、かつての基軸通貨が英ポンドだったように、徐々にドルから次の通貨に移行するに違いない」

アメリカが英国や日本と同じ道を辿る可能性

ロジャーズ氏は続けます。

「世界に危機が訪れると、投資家はドルが安全資産だと誤解し、ドルを買いたがる。しかし、アメリカは過去最大の借金を背負っており、事実上、安全通貨ではなくなっている。

ただ、多くの人がまだ安全だと思っているので、ドルは上がり、割高となってバブルになる恐れもある。そのときには、私にドルを売るタイミングを見抜ける賢さがあることを願っている」

確かに、世界中の国の債務残高は増加の一途をたどり、すでに天文学的数字になっています。すでに日本は約1200兆円、アメリカは約30兆ドルにまで膨れ上がっています。もし世界最大の対外債務を抱えるアメリカの経済悪化が顕著になり、同国債の債務不履行を引き起こす懸念が高まれば、国債の価値は下落し金利が上昇し、世界中で景気が悪化するとロジャーズ氏は懸念しています。

さらにロジャーズ氏はバイデン政権のことを「財政赤字を増やし、それを使うことに抵抗のない政権」と評しています。また、同政権の目玉政策の超富裕層への課税強化に関しては、「結局は富裕層の海外逃避、国籍放棄などを加速させるだけだ」と警告します。

「格差の問題を現状のまま放置することはできない。だが、その財源として増税を強化すれば、資本流出を促してしまい、結果として国を衰退させることになる。約100年前の英国がよい例だが、政府の支出と借金が膨れ上がった英国は、幾度もの増税で競争力を失ってしまった」

日本でも富裕層に対する増税がじわじわと進んでいますが、ロジャーズ氏はアメリカや日本が英国と同じ道をたどるのではないかと懸念しているのです。

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