トンネル入口で「祈願」、リニア新幹線の最新状況 多治見で着工、生物多様性問題は「道筋見えた」

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ほかにも、県は「影響の有無について評価できるよう事前調査を実施し、影響が出た場合にどう対応するのか具体的な方策をあらかじめ決めておくべき」「守るべき設定目標をあらかじめ定めて、その達成のために管理値を決めて、影響把握と対応を考えるべき」と提案したが、JR東海は「沢上部の生態系は調査できない。影響が出そうになったら対策を検討する」「流量の変化と生物の生存限界との関係を定量的に結びつける根拠がないため、あらかじめ管理値を定めることはできない」と否定的だったという。

リニア有識者会議
8月2日に開かれた南アルプスの環境保全に関する2回目の有識者会議(記者撮影)

この説明を聞くと県の言い分がもっともなように思える。念のため、JR東海の宇野護副社長に確認したが、難波理事の説明に「気になる点はあるが、考え方については難波理事のおっしゃっているとおり」とのことだった。

結論までにはかなりの時間

ただ、宇野副社長は「できることは何でもやるつもり」とも発言している。有識者会議の議論を踏まえて生物多様性への影響が予測できるようになれば、JR東海はそれに対する回避策や低減策を打ち出すことができる。

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「県外に流出する湧水の全量を県内に戻す」という難題が立ちはだかる水資源問題とは違い、生物多様性の問題では回避、低減、代償という道筋が見えている。「生物多様性のほうがハードルは高い」と難波理事はこの見方に釘を刺すが、「何をしなければいけないかがわかっている」(同)だけに議論が迷走する可能性は小さいともいえる。

とはいえ、これから数回にわたって関係者ヒアリングを行うとともに現地視察、データ収集、分析といったプロセスが待ち構える。県、JR東海の双方が納得する結論が得られるまでにはかなりの時間を要することが今回の会議ではっきりした。リニアのほかの多くの工区で工事が始まっているだけに、静岡工区の孤立がいっそう際立つことになる。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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