トンネル入口で「祈願」、リニア新幹線の最新状況 多治見で着工、生物多様性問題は「道筋見えた」
ただ、リニア開業に対する思いについて聞かれたときだけは、「下車効果に期待している」と顔をほころばせた。沿線の都府県に1駅ずつ設置されるリニアの駅は、岐阜県では中津川市内に設けられる。「中津川で下車して、多治見で豊かな自然とおいしい料理と観光を楽しんでから名古屋に向かってもらえれば」と、地元のPRを忘れなかった。
問題は、山梨県と長野県を結ぶ全長25.0kmの南アルプストンネルの静岡工区だ。工事が大井川の水資源や南アルプスの生物多様性に影響を与えかねないとして、静岡県が工事をいまだに認めていない。大井川の水資源問題は国が設置した有識者会議で議論した結果、「影響は小さい」という一定の結論が得られたが県は納得していない。また、JR東海は、トンネル工事に伴い県外に流出する湧水の県内への戻し方も提案したが、県はこれも認めていない。
「生物多様性」これまでの議論は
そのような状況下で8月2日、南アルプスの環境保全に関する2回目の有識者会議が開催された。水資源に関する会議と合わせれば15回目だ。前回は生物多様性に関する議論の初回ということもあり、初めて出席する委員の挨拶などが中心だったが、今回は県とJR東海の間でこれまでどのような対話が重ねられてきたかについて、県の難波喬司理事から説明があった。
一例として挙げられたのが、沢の源流部に孤立して生息する希少魚のヤマトイワナ。トンネル掘削によりトンネル付近では地下水位が300m以上低下するという予測もあり、「生息域の水が一時でも枯れれば死滅してしまう。その影響が生態系全体に広がる可能性もある」(難波理事)。県はJR東海に影響を回避、低減する努力を求めているが、JR東海は「影響は回避できないので、ほかの場所に移す“代償処置”で対応する」方針なのだという。
「影響が生じたら代償するというのではなく、あくまで影響の回避が前提である。影響を回避できないなら次に影響の低減策を考えるべき。回避・低減ができない最後の段階で代償処置とすべきだ」と難波理事は訴えた。
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