ソフトバンク、米スプリント復活の綱渡り 2500億円の減損損失が意味するもの
だが、親会社のソフトバンクが採用する国際会計基準(IFRS)の減損計上はゼロ。IFRSではスプリントの資産全体をとらえて減損テストを行う。今回は12月末のスプリントの評価額(支配権を考慮し、時価から3割上乗せ)が、純資産簿価を上回ったために、連結決算では減損を反映しなかった。
米国会計基準では減損テストを個別資産ごと、IFRSでは資産全体で行うという違いから、スプリントで計上した約2500億円の減損損失が、ソフトバンクの連結決算では「なし」という扱いになったわけだ。
決算会見でソフトバンクの孫社長が「社内でもだいぶん議論したが、減損したくてもできないということになった。今後もスプリントの株価が大きく下落する場合があれば、減損を計上する可能性がないとは言えない。状況を見守りながら一歩一歩改善するようにやっていきたい」とも語ったように、業績不振でスプリントの株価が下がり続ければ、実損としてソフトバンク決算に影響を及ぼす可能性もある。
減損の背景にある買収とん挫
実は、今回の減損は、業界4位のTモバイルUS買収を断念したことが影響している。買収当初の事業計画と現状の違いについて、孫社長は「買収して伸ばしていく中で大きな柱だったのが(Tモバイルと)合併をさせることだった。これが正直なところ。その思惑が違ってきている。前任者(ダン・ヘッセ前CEO)が楽観的にみたものと、新たな経営陣(8月に就任したマルセロ・クラウレCEO)が現状から立て直した計画の差が主因になっている」と答えているからだ。
つまり、こういうことだろう。2013年7月にスプリントを子会社化した当初は、後にTモバイルを買収し合併させる前提で、スプリントの成長を楽観的に見ていた。しかし、ソフトバンクは規制当局の認可が難しいと判断し、2014年8月にTモバイルの買収を断念した。これで合併シナリオが崩れ、CEOも即座に交代。スプリント単独で戦うことになり、事業計画の修正を余儀なくされた。
2012年10月にスプリントの買収を発表して以降、Tモバイルはソフトバンクにとって悩ましい存在でもあった。同社はジョン・レジャーCEOの下、 2013年4月にアイフォーンの取り扱いを開始すると、かつて日本でボーダフォンを買収したソフトバンクのように、業界慣習を打ち破る大胆な施策を展開 し、ユーザー数を一気に積み上げてきた。
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