日本人に伝えたい「稲作が温暖化促進」の衝撃事実 CO2の25倍の温暖化効果があるメタンを排出

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この「コメ」によって排出される温室効果ガスの正体は、メタン(CH4)だ。コメを作付けることによって放出されている。しかも、メタンは二酸化炭素(CO2)の25倍の温暖化効果があるとされ、換算すると農林業全体の5%を占めることになる。決して少なくはない。

また、牛など反芻動物の消化管内発酵によるゲップも、メタンとなって排出される。CO2換算で全体の2割以上を占める。

「コメ」が排出するメタンは、稲が作り出すのではない。水をはった田の土中に生息する嫌気性細菌が生成したものだ。そのおよそ9割を、稲が土壌から吸収して、そのまま大気中に放出してしまう。その結果だ。

それでも、つまるところ日本人が主食とするコメを国内で生産しただけで、温室効果ガスが排出されていることになる。

さらに、日本の農研機構が「FAOSTAT(国際連合食糧農業機関統計データベース)」から集計したところによると、パリ協定採択後の2017年の農業分野の温室効果ガス排出量はCO2換算で54.1億トン。このうち、メタンによる家畜の消化管内発酵(ゲップ)が38.8%、家畜排泄物の管理に6.5%、稲作は9.9%を占めている。家畜の糞尿処理と比べても稲作のほうが多い。

「2020年比で30%削減」へ動きはじめた世界

メタンはCO2の25倍の温室効果がありながら、「脱炭素」と叫ばれるように、これまではことさらCO2に光が当たってきた。それが、昨年の後半からようやく世界的な関心が向けられるようになった。

昨年11月にイギリスのグラスゴーで開かれた「第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)」で、100を超える国と地域が参加して、2030年までに世界のメタンの排出量を2020年比で30%削減する「グローバル・メタン・プレッジ」が、アメリカと欧州連合(EU)の主導で立ち上がっている。

メタンは農畜産業のほかにも天然ガスの生産で排出される。人の活動によって発生する温暖化ガスでCO2に次ぐ16%を占める。温室効果はCO2の25倍である一方で、CO2ほど長く大気中に滞留しないため、排出量を削減すれば気候変動対策に素早く、しかも大きな効果が期待できるというのだ。

発足を宣言したアメリカのバイデン大統領は「今後10年で最も重要な取り組みの1つになる」と語っている。

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