知育玩具「ピタゴラス」爆売れでも会社が抱く焦燥 「子どもの好奇心」重視で利益率アップを狙うが

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こうした玩具の販売を伸ばすべく、2022年4月には新たな広報チームを立ち上げ、コーポレートブランディングの強化に乗り出した。

商品を宣伝するテレビCMなどを打つ際、これまで「ピープル」という社名を前面に出してはこなかった。ただ今後は企業名とともに、乳幼児の観察を最重視する企業姿勢や子ども目線の商品の必要性をアピールする情報発信を強化し、「指名買い」につなげることを目指す。

競合には人気アニメのキャラクターなど、IP(知的財産)を用いた商品展開を武器にする会社も多いが、ピープルはそういった商品を手がけていない。その面でも、買い与える親に選んでもらう理由づけをより明確に行っていく必要があるだろう。

子ども自身が「恥ずかしがる」

ただ、この「子どもの好奇心」を重視した商品戦略には、もう一つ大きな課題がある。「ジェンダー」の壁だ。

生まれてすぐの子どもに興味の男女差はない。だが、周りの子どもや大人とかかわる中で、「徐々に『ピンクは女の子のもの』『変身ベルトは男の子のもの』といった意識が染みついていく。(子どもを観察する中で)例えばお人形遊びに熱を上げていた男の子が、ある年齢からそれを恥ずかしがるようになる、ということがよくある」(桐渕社長)。

「玩具とジェンダー」という課題の複雑性について語る桐渕社長(撮影:今井康一)

近年、玩具業界のジェンダーレス化は少しずつ進んでいる。日本玩具協会が毎年発表する「日本おもちゃ大賞」では2021年、これまでの「ガールズトイ部門」「ボーイズトイ部門」といった分類を廃止し、「ベーシックトイ部門」「キャラクター部門」などに変更。玩具販売店でも、売り場の「男の子」「女の子」という区分けをなくす動きが出始めている。

ただ、商品の買い付けを行うバイヤーが実質的に男児・女児向け玩具で分かれていたり、前述のように子ども自身が自らの好奇心に100%従って欲しいものを選べなかったりする状況は依然としてある。ユニセックス化した商品をつくっても、売れるかどうかは別問題なのだ(詳細は8月6日配信予定の桐渕社長のインタビュー記事)。

子どもの好奇心を重視した商品戦略を貫きつつ、業績面での成長も続けられるか。ピープルの超えようとしているハードルは決して低くない。

武山 隼大 東洋経済 記者

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たけやま はやた / Hayata Takeyama

岐阜県出身。東京外国語大学国際社会学部モンゴル語専攻卒。在学中に西モンゴル・ホブド大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在ゲーム・玩具業界を担当。

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