知育玩具「ピタゴラス」爆売れでも会社が抱く焦燥 「子どもの好奇心」重視で利益率アップを狙うが

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近年はマグナタイルズのヒットに触発された玩具メーカーによる類似製品も出回るようになった。海外での販売は代理店経由で行っているため、彼らが力を入れて売る商品を入れ替えるリスクなども無視できない。

日本市場はというと、原価高騰分の価格転嫁には小売店側の反発が大きい。メーカー間の競争も激しく、おいそれとは値上げしづらい状況だ。

「この先生き残っていくためには、レッドオーシャンではない領域での展開を広げなければならない。価格競争に巻き込まれないような商品や事業を生み出す必要がある」。ピープルの桐渕真人社長はそう話す。

ではその「レッドオーシャンでない領域」とはどこか。社内で議論を重ねて見出したのが、ひたすらに子どもの「好奇心」を探求して開発する商品を拡充する道だ。

親の「困りごと」を基に開発しヒット

これはピープルにとって、もともと得意としている領域でもある。コロナ禍以前、本社オフィスに併設するショールームには週に3、4回のペースで乳幼児と親を招き、思い思いに遊ぶ様子を観察。親へのヒアリングなども通じ、商品開発に生かしてきた。

「泣く子もケロリ!魔法のラトル」(左)と「なめても安心 赤ちゃん専用新聞」。いずれも赤ちゃんの遊ぶ様子を観察し生まれた商品だ(撮影:今井康一)

例えば「泣く子もケロリ!魔法のラトル」は、乳幼児を持つ親のアイデアを基に開発され、大ヒットにつながった商品だ。

基本的には振って音を鳴らすおもちゃだが、本体に付いているボタンを押すと、スーパーのレジ袋をくしゃくしゃにするような音が流れる。このレジ袋音は赤ちゃんがお腹の中で聞いていた母親の血流の音に近く、ぐずる時でも聞かせればすぐに落ち着いて泣きやむと、口コミが広がった。

新聞をまねたおもちゃ「なめても安心 赤ちゃん専用新聞」は、触るとガサガサと音が鳴る。大人のものに何でも興味を持ち、触ったり口に入れたりする乳幼児を観察し、その好奇心に応えるためにつくった商品だ。

「赤ちゃんは悪意でやっているわけではない。成長の過程で生まれてくる好奇心に対し、親がダメと言わず思う存分やらせてあげることは、脳の成長にも有効だといわれている」(桐渕社長)

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