永守重信氏「不安に襲われた時の考え方」が生む差 人生はだいたいプラスマイナスゼロなんだから

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実際どうなったかといえば、それから40数年経った今、すべてその通り実現しています。つまり、「すべては志から始まる」「始めに志ありき」なのです。ですから、みなさんにも、自分の志をはっきりさせることから始めていただきたいと思っています。

ただ、志を立てたからといって安心してはいけません。人間というものは、あるところまで来ると、必ず自己満足に陥ってしまうものだからです。「自分はこの程度でいいかな」と一度満足してしまうと、もうそれ以上前に進めなくなってしまいます。

そうならないようにするためには、「志」を大きくしていくという発想が欠かせません。経営者であれば、社員にもっといいオフィスで働いてほしいと考えて、新しいビルに移転する。それが実現したら、今度は栄養のある食事を安価で食べてほしいと考えて、社員食堂をつくる。さらには自社ビルを建てる、上場するというように、年を追うごとに志を大きくしていかなければならないのです。

すべての仕事は世の中に貢献している

これは経営者に限った話ではありません。すべての仕事は世の中に貢献しているから存在しています。どんな人の仕事にも使命はあるのです。日本電産の使命は、たとえば洗濯機が開発された理由がそうであったように、人間がつらいと思う仕事をそうではない形に変えていくことにあります。そして洗濯機ができれば、乾燥機を開発するというように、どんどん志を大きくしていく、絶えず夢を語っていく。仕事をするということは、夢を形にすることと同義なのです。

もし今、ご自身の人生や仕事における志、夢を見失っているなら、もう一度原点に立ち返り、志を打ち立て、夢を抱いてください。そして、自分の家族、身近な友人、一緒に働く仲間、取引先に夢を語ってください。その夢が実現できたなら、その次にはもっと大きな志と夢を抱くようになるでしょう。

世の中、いいことばかりが起こるわけではありません。人生は上下を繰り返すサインカーブみたいなもので、いいことがあったり、悪いことがあったりしながら、よくよく計算すると、だいたいプラスマイナスゼロになっているものです。

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