自民党最大「安倍派」後継不在でうごめく権力闘争 今は「塩谷・下村」中心の集団指導体制だが混沌

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安倍氏は2021年11月の会長就任時に、現在の塩谷、下村博文両氏を会長代理、西村康稔氏を事務総長とする執行部体制を決めた。このため、9月上旬と見込まれている第2次岸田改造内閣発足の際の党・内閣人事の安倍派の窓口は塩谷氏とし、国葬後の派閥運営については、改めて協議する方針。そこで問題になるのが、派内に衆目の一致する後継候補がいないことだ。

7月8日の安倍氏の訃報を受け、同派幹部は参院選終了直後の11日夜に都内で対応を協議したが、「派閥としての一致団結した行動」の確認にとどまった。その背景には、後継者をめぐる幹部間のあつれきがあり、「各幹部の思惑が交錯し、とても後継者を決められる状況ではない」(安倍派の若手)との派内事情がある。だからこそ、21日の総会で集団指導体制を確認するしかなかったのが実態だ。

ただ、集団指導体制では最大派閥としての求心力維持は困難視されている。岸田政権幹部も「人事も含め誰と話していいかわからなければ、対応しようがない」(官邸筋)と顔をしかめる。同派は参院選後も膨張を続け、100人の大台に迫っている。それだけに、同派の混乱は岸田文雄首相にとって、当面の人事だけでなく、その後の政権運営に大きな影響を及ぼすのは確実だ。

「派内に四天王をつくりたい」と言っていた安倍氏

安倍氏は2017年に「派内に『四天王』をつくりたい」と発言し、後継者づくりに取り組む考えを示していた。安倍氏の父、晋太郎氏が派閥領袖だった際は、森喜朗(元首相)、三塚博(元幹事長、故人)、塩川正十郎(元財務相、故人)、加藤六月(元政調会長、故人)の4氏を「四天王」と位置付けていたからだ。

ところが、現在の安倍派幹部の顔ぶれをみると、「四天王」というような後継候補は明確ではない。会長代理は塩谷、下村両氏だが、後継に意欲的なのは下村氏で、塩谷氏は調整役とみられている。

後継争いの現状をみると、下村氏が当選回数や経歴では先行するが、萩生田光一経済産業相や松野博一官房長官、派閥事務総長・西村康稔氏、参院の安倍派を束ねる世耕弘成参院幹事長らも虎視眈々とされる。

さらに若手の間では、同派創始者の故福田赳夫元首相の孫の福田達夫総務会長を「正統な後継者」と推す声が台頭。福田氏は2021年の党総裁選で当選3回以下の議員を束ねて「党風一新の会」を結成、総裁選に大きな影響を与えたからだ。

また、その総裁選で安倍氏が推した高市早苗政調会長を支持する議員も少なくない。同氏は現在無派閥だが、数年前まで清和研に属していた。女性候補としては安倍氏の寵愛を受けていた稲田朋美氏元防衛相も意欲をにじませている。

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