羽生結弦のプロ転向会見に見た圧倒的な人間の幅 揺るぎない自負と「つらさや弱さをさらけ出す」強さ

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これは「プロスケーター・羽生結弦」としての決意表明であり、ファンへの挑戦状なのかもしれません。競技ではなくなることでより厳しいチャレンジが可能になり、だからこそみなさんを楽しませられる。引いては、「プロスケーターのイメージを変えていきたい」「オリンピックのメダル至上主義を覆していきたい」という意味も含まれていそうです。

今回の会見で羽生選手が多用していたフレーズは、「ありがとうございました」という感謝、「応援してやってください」というお願いの2つですが、それ以上に多かったのは「羽生結弦」という自らの名前。これは自らの努力と周囲の応援で作り上げてきた羽生結弦というブランドに誇りを持っているからであり、決して「ナルシストだから」というわけではないのです。

そしてもう1つ印象深かったのが、類いまれな美意識の高さ。それは「羽生結弦はこうでありたい」という美学と言ってもいいでしょう。

これまで貫いてきたもの、これから貫いていきたいものを聞かれた羽生選手は、「『常に挑戦し続けること』はこれからも続けていきたいなと思います」「僕は気持ちとしてはそんなに大きく変わったつもりはないです」とコメントしました。

これをビジネスパーソンに置き換えると、「職務や役職などが変わっても、移籍や独立などをしても、自分のスタンスは変えない」と宣言しているようなものであり、一目を置かれることにつながっていきます。また、「そのような転機のときほど、自分の拠りどころになりうるところを見極めて、変えないことが大切」とも言えるでしょう。

「トップは孤独」だからこその自問自答

今回の会見でビジネスパーソンたちが学ぶべき姿勢はまだまだありました。

その最たるところが、「いつプロ転向を考えたか?」という質問への受け答え。羽生選手は、「毎試合、毎試合、終わるごとに考えていました。本当にいろんなことを考えて。『これ努力している方向が間違っているのかな』『頑張れていないのかな』とかいろいろなことを考えながら競技をしてきました」と語りました。

次ページ会見の最後に聞かれた今後の最優先事項への答え
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