中日信用金庫で発覚、「ゼロゼロ融資」不正の深層 現役の職員がノルマ達成のプレッシャーを指摘

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ほかの金融機関関係者を驚かせた中日信用金庫のリリース(写真:編集部撮影)

「融資を受けたい企業が業績の数字を書き換えるならまだしも、金融機関自らとは……」

複数の金融機関関係者が一様にそう驚くのは、中日信用金庫(本店・名古屋市)で明らかになった事態だ。中日信金は7月12日、いわゆる「ゼロゼロ融資」の申請過程で不正が判明したと発表した。

ゼロゼロ融資とは、コロナ禍で売り上げが減少した中小企業に対して、緊急的に実施した実質無利子・無担保の融資だ。民間の金融機関では2020年5月から2021年3月の間、受け付けを行っていた。

この融資は、万が一融資先企業が倒産した場合でも、信用保証協会が金融機関の損失を80~100%肩代わりする。借り手企業から見れば実質無利子・無担保だが、金融機関側は融資した際の利子に相当する金額を利子補給として受け取っている。つまり、金融機関は貸し出しを積み上げれば低いリスクで収益を上げられる。

貸出金のノルマと上層部からのプレッシャー

中日信金によれば、本来ゼロゼロ融資の対象とはならない企業に対しても、一部の職員が適用対象となるよう売り上げを書き換えて申請し、自治体から認定を受けていた。中日信金の貸出金残高は2022年3月末時点で1792億円と、愛知県内に存在する15信金のうち中下位に位置する。

中日信金には2022年3月から東海財務局が立ち入り検査に入っており、職員に対して検査官が個別にヒアリングを行っている。危機対応のさなかに何が起こっていたのか。

「貸出金にノルマを課され、上層部からプレッシャーをかけられていた」。東洋経済の取材に応じた中日信金の現役職員は、融資先企業の売り上げを書き換えた理由をそう吐露する。

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