千葉雅也「思考を効率化しない事」がなぜ重要か 話題の哲学書『現代思想入門』の著者に聞く

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── 近代、つまり現代の前ということですよね?

千葉:近代というのは17から19世紀ぐらいの幅ですが、僕らの生きている現代というのも、近代のシステムがベースになっているのです。つまり、そういう「どこかで誰かが見ているかもしれない」という心配をベースに、自分で自分を躾けるようにさせるという統治のやり方です。彼はそれを「規律訓練」と言ったのですが、それが現代のOSのようなものになっている。

※ミシェル・フーコー:1925~1995年、フランスの哲学者・思想史家。パノプティコン(一望監視施設:中央の高い監視塔から監獄の全ての部分が見えるように設計された円形の刑務所施設。イギリスの思想家ジェレミー・ベンサムの考案)を、ヨーロッパの近代管理システムの例として取り上げたことで知られる。

── 人がお互いに監視し合うということでしょうか?

千葉:コロナの自粛は規律訓練そのものだし、ネット上に“なんとか警察”みたいな人たちがいっぱいいて、下手なことを言うとすぐに批判がワーッと湧いてくる、みたいなこともそう。みんな、色々な意味で自粛モードになっているわけです。だから今、大学の授業でフーコーの話をすると、学生の反応はコロナ以前よりもいいというか、まさに今のことだ! という反応をするんです。その反面、一部には「規律訓練をうまく使えば、世の中がもっと安全になる」なんて言い出す人もいたりして。

カメラで予防するという感覚が強くなってきている

── それはちょっと怖い考え方ですね……。

千葉:少しですがそういう人もいますね。もっと監視カメラを作ったほうがいいとか。

── 私は以前ロンドンに住んでいたことがあるのですが、あちらにはCCTVと呼ばれる防犯目的の監視カメラがいたるところに設置されていて、街を歩いていても、買い物をしていても、常に見られているのです。それもすごい社会だなと。

千葉:イギリスは日本より早かったですよね。日本で監視カメラの必要性が議論され始めたのは2000年代前半だと思います。あの頃はみんな文句を言っていたのだけれど、最近は反対する人もいなくなってきた。それどころか若い世代も含め、むしろカメラで予防するという感覚のほうが強くなってきている。いかがなものかなと思いますよ。

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