アベノミクスで終わるものと復活を急ぐべきもの 金融市場に特別な足跡を残した安倍元首相

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一方、さまざまな議論が飛び交う金融政策分野とは異なり、インバウンド促進に伴う実績は手放しで評価されるものと考えている。2012年12月の第2次安倍政権の発足後、1週間足らずでビザ発給要件の緩和措置に着手し、中国とASEAN(東南アジア諸国連合)諸国からの観光客に対するビザ発給要件を徐々に緩和した。これによりアジアで勃興しつつあった中産階級の消費・投資先としての日本がアピールされ、潜在的な需要が掘り起こされた。

新型コロナウイルスの水際対策と称して外国人の門前払いが続けられている現状は、隔世の感を覚える。アベノミクス下での円安は輸出数量を増やさず、貿易黒字も稼げず、国内の賃金情勢にも大きな影響を与えられなかったが、インバウンド需要を掘り起こす一助になったことは間違いない。そのスピード感には前向きな評価が与えられてしかるべきだろう。

岸田政権はインバウンドの全面解禁を急げ

今や円安を痛みと受け止める雰囲気が強くなってしまった現在の日本経済において、これを逆手に取る道があるとしたら、やはり、インバウンド需要を狙ったサービス輸出しかなく、そこに先鞭をつけたという意味でアベノミクスの功績はある。

どうか岸田政権には、当時の経験を思い返した上で、足元の円安をサービス輸出(旅行収支)の追い風とできるような環境整備に尽くしてもらいたい。5月のロンドン・シティ講演で「G7並みの入国規制」を約束してから丸2カ月が経過したが、状況はほとんど変わっていない。悲報を受け岸田首相は「安倍氏の思いを受け止め、引き継ぎながら日本について引き続きしっかりと責任を果たしたい」と述べた。その言葉の意味するところに期待したい。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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