アベノミクスで終わるものと復活を急ぐべきもの 金融市場に特別な足跡を残した安倍元首相

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

とはいえ、リフレ政策にまったく意味がなかったわけではない。民主党政権下での超円高・株安の地合いはアベノミクスの掛け声で一変した。もちろん、それがなくとも第2次安倍政権の発足は、欧州債務危機が終息しアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が正常化プロセスに入る時期に重なっており、何より2012~2013年は日本が貿易黒字を稼げなくなった時期とも一致するため、おそらく超円高は自然に修正される時期に来ていた。

だが、リフレ政策の華々しい打ち上げが爆発的な円安・株高につながった面も否めず、それにより落ち目と見られていた日本経済が海外から関心を集めることができた。筆者の業務においても、2013~2015年は海外から説明を求められる機会が非常に多かった。こうした海外からの日本の変化への期待は、それ以降、経験がない。今回の悲報を受け全世界からメッセージが届いているが、経済政策の面でもアベノミクスを鮮烈に記憶する向きも多いのだろう。日本経済の地位低下を食い止めた印象はある。

金融政策から成長戦略への転換を逸した2015年

それでもアベノミクス3本の矢(金融政策・財政政策・成長戦略)において本質的に最も重要と期待された成長戦略、特に労働市場改革には及ばず、また、それゆえに名目賃金上昇という永年の課題もクリアされなかった。2016年以降、金融緩和に象徴されるアベノミクスは失速過程に入った。同年9月のYCC導入を契機に日銀は明らかに表舞台から姿を消したし、それがYCCの目的でもあったと思う。

理論的にも、貸し出し(マネーサプライ)が相応に増えない日本において、ベースマネーを増やせば物価が上がるという理屈は実現が難しいと指摘され、実際にそうだった。結果論だが、CPI(消費者物価指数)がプラス圏で定着し始めた2015年時点でアベノミクスを総括し、リフレ政策を終了していたら、その後の評価はだいぶ前向きなものになっていた可能性がある。

次ページインバウンドは円安を生かすよい政策
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事