ウエルシア、「都市店攻略」へ横たわる2つの難題 都市型のコクミン買収に錯綜する期待と不安
都市型店での高収益モデルを作り上げたドラッグ大手は2社ある。
1社は、マツキヨココカラ&カンパニー傘下のマツモトキヨシだ。収益性の高い化粧品とOTC医薬品(一般用医薬品)の販売力に定評があり、とくにPB(プライベートブランド)の強さで他社と一線を画している。
PBは商品在庫を小売り側が買い取る代わりに、メーカー製品より利幅が大きい。化粧品などのPBは、不良在庫を抱えなければ粗利率は65%ほどになる。メーカー製品の化粧品の粗利率が3~4割程度であることを考えると、PBの収益性の高さがわかるだろう。
マツキヨが展開するスキンケアのPB「ザ・レチノタイム」は、美容液であれば30gで7700円という、高価格帯のブランドだ。ほかにもコーセーとコラボした敏感肌用スキンケア「レシピオ」など、中~高価格帯の化粧品のPBに強みを持つ。
他方、ウエルシアが展開するPBは、中~低価格帯の日用品や健康食品を取り扱うのみ。高価格帯のPBの販売は、価格訴求を重視してきた多くのドラッグにとってハードルが高い。今後コクミンの品ぞろえを見直すうえでも、PBの商品開発とブランド力強化を両軸で進める必要がある。
コスト構造の改革が不可避
都市型店の展開に成功したもう1社が、サンドラッグだ。同社の特徴は、徹底したローコスト経営にある。売上高に占める販管費の比率は18%と、ウエルシアの27%を大きく下回る。
サンドラッグは、同社の中興の祖とも言われる才津達郎・前会長が叩き込んだコスト管理の意識が社内に浸透している。
例えば、多くのドラッグが全社一律で販促キャンペーンを行うのに対し、サンドラッグの場合は店舗ごとに配布するクーポンが異なる。また、およそ20年前から各店舗で分単位のシフト計画を作成するなど、各店舗の状況に応じて収益を最大化させるべく、コストの見極めを徹底してきたのだ。
一方のウエルシアは、人件費が高い薬剤師を多く雇っていることなどから、競合する郊外型ドラッグと比べても販管費比率が比較的高い。店舗別のコスト管理の面では、最近になりシフト管理システムを導入した。「コスト構造を改革しないと、都市部で競争が激しくなったときに利益を出せない」(大和証券の川原氏)。
現状は課題山積のウエルシアだが、24時間営業や調剤という、マツモトキヨシとサンドラッグにはない武器も持つ。コクミンの収益を立て直す傍ら、PBの育成とコスト改革が進めば、都市型ドラッグの勢力図を変える可能性もあるかもしれない。
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