JR東日本、2つの「裏方車両」開発に込めた戦略 旅客と同じ仕組みを事業用に導入し効率化狙う

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JR東日本の新型事業用車両。E493系(左)とGV-E197系(記者撮影)
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真新しい2つの車両が並んでいる。どちらも客を乗せない事業用車両。いわば裏方である。

両者を比べるとイエロー主体の正面はそっくり。外観全体もなんとなく似ているし、内部を見学すると運転台も似ている。

しかし、動く仕組みは大きく違う。一方は電車、もう一方はディーゼルエンジンで発電機を駆動し、発生した電力を使って電車と同じくモーターで走行する電気式気動車である。JR東日本が5月27日、尾久駅構内で2つの車両の報道公開を行った。

回送牽引やバラスト散布が仕事

電車は「E493系」という形式で、電化区間における車両の入れ換え作業や回送車両の牽引などに用いられる。電気式気動車の形式は「GV-E197系」。気動車のため電化区間、非電化区間を問わず走行可能だ。バラスト(砕石)の輸送・散布作業のほか、非電化区間における車両の入れ換え作業や回送車両の牽引に用いられる。

従来のバラスト運搬では機関車がバラストを積載する貨車を牽引していたが、方向転換時には機関車を付け替える必要がある。付け替え作業は人手で行うため結構な手間がかかるし、安全面でも気を遣う。

しかし、GV-E197系は貨車の前後に牽引車を連結した形だ。編成の両端に運転台があるため、方向転換時の機関車付け替え作業が不要となる。JR東日本運輸車両部車両技術センターの菊地隆寛所長は、「方向転換時の手動による連結作業がなくなるほか、メンテナンス面でも機関車特有の重い部品を運ぶ必要がなくなるので労働災害のリスクを回避できる」と期待する。

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