JR東日本、2つの「裏方車両」開発に込めた戦略 旅客と同じ仕組みを事業用に導入し効率化狙う

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また、JR東日本は旅客運行において、一部の区間で気動車から電気式気動車への置き換えを進めている。「電車等で培ってきた技術の採用、共通化により、安全安定輸送と質の高いサービスを提供できる」というのがその理由だ。

電気式気動車はモーターを駆動して走行するという点で電車と共通であり、メンテナンス面での効率化を図ることができる。また、人員面でも電気式気動車は電車の運転資格者が追加で必要な教育を受けることで運転が可能になる。あらためて気動車の運転資格者を育成する必要がないのだ。

今回導入したE493系は電車で、GV-E197系は電気式気動車。これまで機関車が主役だった事業用車両に旅客と同じ仕組みの電車や電気式気動車が導入されるということは、運転面やメンテナンス面における大幅な効率化につながるわけだ。「構造が複雑な機関車を運転するための研修には多くの時間と労力が伴う。機関車の数が減りつつある状況においては、この研修の負担が減ることも大きな効率化につながる」(菊地所長)。

はたして愛称は?

近年は有料の車両基地見学ツアーが発売と同時に完売するなど、鉄道運行を支える裏方への関心が高まっている。E493系とGV-E197系も、鉄道ファンの間では「205系電車に似ている」と話題になっている。

近年まで首都圏の各線で活躍していた205系電車。写真は横浜線の車両(編集部撮影)

205系とのデザイン上の関連性について、菊地所長は「シンプルさ、造りやすさを狙った。特にモチーフはない」と否定している。カラーリングについては「キヤE195系の黄色と統一感を持たせた」とのことだ。

このように実用面を強調しつつも、「お客さまにご乗車いただく車両ではないのでなかなか目に触れる機会がないかもしれないが、開発担当者としてはときどきでも活躍する姿をご覧いただければという思いがある」と菊地所長はいう。

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E493系とGV-E197系という形式で呼ぶのは味気ない。新幹線の検測用車両は「ドクターイエロー」や「イーストアイ」といった愛称で親しまれている。JR東日本はE493系とGV-E197系に愛称を付けることは考えていないが、自然発生的に愛称が付きそれが定着すれば、鉄道運行の裏方たちが評価された証しである。開発者冥利に尽きるというものだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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