ロシアに「バイデン政権の弱体化」は都合が良い訳 NATOのロシアへの対決姿勢明示は歴史的な転換
松山キャスター:実際、ロシア国内でそういう意見が出ている。
木村氏:ロシアのテレビはいまとにかく「共和党頑張れ」というような放送をやっている。先日、400億ドル規模の緊急支援を決めたが、投票では上院の共和党員50人のうち11人が反対票を投じた。「米国にはこんなこと(ウクライナ支援)をやっているカネはない」「国内の方が大変だ」とういう声はますます強くなる。
バイデン政権の弱体化とロシアの目
松山キャスター:バイデン政権の弱体化をロシアはどう見ているのか。
廣瀬陽子氏(慶応大学教授):ロシアはもともと一極支配に反対してきた。先日のプーチン大統領の演説でも「一国や一グループが世界を支配することには反対する」と明確に言っている。米国が自壊していくことはロシアにとってプラスだ。非常に良い局面として見ている可能性が非常に高い。
松山キャスター:米国が地対空ミサイルシステム2基を含む8億ドル(約1100億円)規模の対ウクライナ追加軍事支援を発表した。この防空システムは首都ワシントンの防衛にも使われている最新鋭のもののようだが、戦況を変える要素となり得るか。
河野克俊氏(前統合幕僚長):決定打にはならないが、なり得る。ウクライナは防空システムが弱く、ミサイルや航空機等の攻撃を頻繁に受けている状況だ。今回の防空システムは相当役に立つと思う。
松山キャスター:先ごろ開かれたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議は歴史的転換点とも言われている。
梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):6月29日、NATOは今後10年間の指針となる新たな「戦略概念」を採択した。ロシアを「最も重大で直接的な脅威」だとして事実上の「敵国」に認定した。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟に向け必要な手続きを進めることでも合意。ロシアに対して対決姿勢を鮮明にした。
松山キャスター:NATOの戦略概念は、ロシアを「直接の脅威」とし、中国が「体制上の挑戦」を突きつけていると定義した。冷戦時代に戻るかのような動きだが、この意味合いは。
鶴岡路人氏(慶応大学准教授):非常に大きな転換点だ。今回の戦略概念の文書も首脳会合も、NATOがイースタンフランク(Eastern flank)と呼ぶバルト諸国とポーランドの防衛をどのように強化するかが主眼だった。それらの国々に対するNATO部隊の配備の拡大、あるいは有事のNATOとしての即応態勢の強化・拡大が柱だった。中でも特に重要なのがバルト諸国をどう守るかという問題だ。
今回ウクライナで起きたことを見ると、ロシアに一回占領されてしまうと破壊しつくされ、大量殺戮も行われてしまう。今まではいったん占領を許してしまった後、再上陸で解放するというのがNATOの防衛計画だといわれていた。ただ、これだとバルト諸国は破壊しつくされてなくなってしまう。そのため占領を許さないように前方防衛を強化しようというのが一つ大きな流れになっている。