厳しい?アメリカ「たばこ規制」はここまでやる 中毒者削減へ、たばこ会社にニコチン削減義務

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「この1つの規則で、公衆衛生史上、類を見ない効果がもたらされる可能性がある」。最近までFDAのたばこ製品センター長だったミッチ・ゼラー氏は、そう語る。「それがこの規制の範囲と規模だ。喫煙は依然として予防可能な疾病や死亡の主な原因となっているのだから」。

アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、毎日およそ1300人が、喫煙が原因で早死にしている。

ニコチンの「95%削減」案も

それでも、計画が直面する障壁は大きく、それを乗り越えるには何年もかかるかもしれない。これまでに提示された計画には、たばこのニコチン含有量の95%削減を義務付けるものもある。専門家によれば、これにより3000万人と推定されるアメリカの喫煙者を、不安やいら立ち、集中力の低下といったニコチン禁断症状に追いやり、電子たばこのような代替品に走らせる恐れがあるという。

専門家によると、ヘビースモーカーは違法な取引、または国境を越えてメキシコやカナダに行くことで、高ニコチンのたばこを買おうとするかもしれない。

FDAは、たばこ業界からの猛烈な反対を押し切る必要が出てくるだろう。同業界はすでに、800億ドル規模のたばこ市場にFDAが大規模介入できない理由を列挙し始めている。法的問題の解決には何年という時間を要しかねず、さらにFDAが規制対応への準備期間として、たばこ業界に5年以上の猶予を与える展開も考えられる。

ニコチン含有量引き下げの取り組みは、今年4月に発表されたメンソールたばこの禁止案に続くものだ。黒人の喫煙者には、メンソールたばこの愛煙者がとくに多い。

メンソールたばこの製造・販売を禁止する提案は、公衆衛生を前進させる画期的な措置になりうると評価されており、これまでに何万件ものパブリックコメントが寄せられている。FDAには、規制の最終案を固める前に、これらのコメントを確認し、対処する義務がある。

2009年の画期的なたばこ規制法に盛り込まれたその他の大規模な対策は、実現が遅れている。パッケージに図柄入りの警告を表示するようメーカーに義務付ける計画は、訴訟で延期されることとなった。FDAは先日、どの電子たばこの販売を引き続き許可するかという重要な決定を下すには、最長でさらにもう1年かかると述べてもいる。

「マールボロ」を製造するたばこメーカー、アルトリアが出した声明は、ニコチン含有量の大幅規制に対して反対派が行うとみられる主張を予見させる内容となっている。

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