素通り観光列車に「ドア開けて」、地元学生の奮闘 JR日下駅おもてなし活動は「乗客の下車」目指す

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日下駅は日高村の中心部に位置しており、駅周辺には村役場のほか、複数の飲食店やスーパーマーケット、ドラッグストアなどが立地しており、決して人里離れた山奥の無人駅ではない。

実際、窪川駅から高知駅に向かう上り列車(開花の抄)では、食事の提供時間中となる須崎駅に19分間運転停車をし、ドアを開放するため乗客がホームに降りることができる。そのため、須崎市観光協会が中心となって、お土産配布や踊りをはじめ、部活動やサークル活動による発表、各種物販といったおもてなし活動が行われている。その一方で、日高村役場が中心となっておもてなし活動を行っている日下駅では、衛生上の問題を理由にドアを開けてもらえないという点はどうも腑に落ちない話だ。

社会経験のない大学生の私ではこれ以上はどうにもならないことから、課題解決のヒントを探るために、地方創生の観点から見た今後の日下駅のおもてなし活動がどうあるべきかについて、両備グループの小嶋光信代表兼CEOに伺うことにした。

「ビジネスセンスとしてはいかがなものか」

両備グループは岡山県を中心に軌道事業とバス事業を展開するほか、和歌山電鉄の「たま駅長」目玉にした事業再建をはじめ、全国各地でローカル鉄道やバス事業の再建を積極的に手がけている。

両備グループの小嶋光信代表兼CEO(写真:両備HD)

小嶋氏は両備文化振興財団が岡山市内で運営する夢二郷土美術館の館長も務めており、私はこの夢二郷土美術館で「こども学芸員」の活動を小学6年生の時から5年間続けていたことから小嶋氏とは面識があった。そこでインタビューを申し込んだところ快諾いただいた。

おもてなし活動をしている日下駅で観光列車のドアが開かないJR四国の対応について、小嶋氏は「ビジネスセンスとしてはいかがなものか」という見方を示した一方で、「列車のドアが開かない窓越しのおもてなし活動をしている例はほかにない」ことから「うまく情報発信ができれば日本一の取り組みとして注目されるのではないか」と話してくれた。

一方で、「地域のビジネスに結びつかないおもてなし活動が続くようであれば、参加者のモチベーションも下がり継続できなくなるのは時間の問題ではないか」という懸念も示した。「観光列車のドアを開け乗客がホームで特産品などの購入ができるようにすること」が重要で、「短い停車時間であっても申込書を配布すれば物販はできる」という。

今後のあり方については、まずは「窓越しのおもてなし活動」の取り組みを続けることで参加者の意識を高め、JR四国に対しては、衛生面の問題で克服をしなければならない課題があるのであれば、その点について地域としっかりと情報共有をすることを前提としながら列車のドア開放の要請活動を行っていくことが重要になりそうだ。

小嶋氏の話をもとに、日下駅のおもてなし活動を日本一にするための方法を原点に立ち返って考えたい。

小椋 將史 ライター

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おぐら・まさふみ / Masafumi Ogura

2000年静岡県生まれ、岡山県育ち。
岡山県立岡山朝日高等学校、高知大学人文社会科学部卒。現在、高知工科大学大学院在学中。高校時代から鉄道ファンイベントの運営に携わり、広報活動を実地で学ぶ。2019年には井原鉄道などとコラボした「#鉄路でつなぐ復興のみち」を主催し、NHKや毎日新聞など多数のメディアに取り上げられた。

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