素通り観光列車に「ドア開けて」、地元学生の奮闘 JR日下駅おもてなし活動は「乗客の下車」目指す

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日高村おもてなし楽会の着想は、私が高校2年生の時に大学受験における総合選抜に向けた準備と情報収集のために、静岡県富士宮市のご当地グルメ団体「富士宮やきそば学会」の故渡邉英彦会長にお話を伺ったことがきっかけとなり得たものだ。

故渡邉会長は、「富士宮やきそば」を全国区の知名度に押し上げ、B-1グランプリ主催団体の会長として日本全国にB級ご当地グルメブームを巻き起こした立役者だ。富士宮市役所と富士宮やきそば学会事務局に問い合わせをしたところ、故渡邉会長に直接お会いし話を伺うことができた。地方創生には、多くの人に興味を持ってもらうことができる魅力的なキャッチコピー作りが重要になることを学んだ。

おもてなし活動への参加で見えた課題

継続して観光列車のおもてなし活動に参加をしていく中で、課題も見えてきた。理想はこのおもてなし活動がきっかけとなり観光列車の乗客に日高村に興味を持ってもらうことで、日高村のトマトやオムライスといった特産品などの販売に結び付けることだ。

しかし、おもてなしをする側が横断幕やコスプレで観光列車の乗客に楽しんでもらうことが目的化してしまい、もともと考えていた地域経済の活性化にはつながっていないようにも感じられた。

とはいえ、車両のドアが開かない運転停車という不利な状況のなかでできることには制約もある。2022年のダイヤで下りは8分停車するが、上り列車は2021年のダイヤでは運転停車時間は3分だったが、1分短縮し2分になってしまった。

現場でやれることは、おもてなし活動の取り組みを継続的に行うことで、日下駅や日高村に関する乗客の関心を高めて、観光列車の停車時間の引き延ばしの実現や観光列車のドアを開けてもらえるような空気感を作り出すことだ。ドアさえ開けてもらえれば、乗客がホームに降りる。ホーム上で日高村の名産品をPRしたり、販売したりすることもできる。

そこで、なぜ日下駅ではドアの開かない運転停車なのかJR四国に問い合わせてみた。同社によると、日下駅でのおもてなしについては「列車の賑わい作りや魅力向上につながっており、今や欠かせないイベントとなり乗客からも好評であることから、引き続き沿線地域と一体になって列車の運行を盛り上げていきたい」という一方で、ドアの開閉については「日下駅停車中の車内では上下便ともに食事やドリンク等の提供をしているため、車内に虫が侵入し飲食物に付着する恐れがあることからドアが開かない運転停車としており、今後もドアを開ける予定はない」との回答だった。

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